2012 Fiscal Year Research-status Report
都市組織の重層的変容に基くパリの近現代都市基盤インフラ形成に関するGIS援用研究
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23656378
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
松本 裕 大阪産業大学, デザイン工学部, 准教授 (20268246)
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Keywords | 土地区画整理 / 都市組織(urban fabric) / 再開発 / GIS(地理情報システム) / 地籍図 / インフラストラクチャー / バロン・オスマン / 地割 |
Research Abstract |
本研究では次の仮説を立て研究を行っている:「歴史都市=都市組織(tissu urbain/urban fabric)の重層化」、「場所の固有性・歴史性=都市組織の重層の仕方・具合」。 具体的には、歴史都市パリの中心市街地(第I,II区)を対象に、そこにおける都市組織の重層過程をGIS(地理情報システム)をHIS(歴史情報システム)として援用しながら図化し、その変遷の詳細を分析することにより、場所の固有性を明らかにすることである。 研究初年度(2011/H23)に、旧市壁(シャルル5世とルイ13世の城壁)界隈を対象に上記分析を試みてパリ市中心部から旧郊外(フォブール)への連続的な展開を広く図化し、変化の起こった個所を明示したのを受けて、研究2年目の2012/H24年度は、テーマ「オスマンのパリ大改造計画による都市組織の大規模再編の詳細」に関して、関係する場所の変化を深く掘り下げる作業を行った。その際、[1]オスマン在任中(1853-1870)に実施された開設道路、[2]オスマン失脚後の「ポスト・オスマン」期に継続実施された開設道路、に大別し、近現代都市再開発の基盤を形成したナポレオン3世とセーヌ県知事オスマンによるパリ大改造計画の実態を明らかにした。 また、パリ市における現地調査を行い、関連する一次資料収集を行った。具体的に利用した資料館は次のとおりである:パリ市行政図書館、パリ市古文書館、パリ市歴史図書館、アルセナル館資料室。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近現代都市再開発の基盤を形成した「オスマンのパリ大改造計画による都市組織の大規模再編の詳細」を道路開設事業を中心に、二つの時期;[1]オスマン在任中(1853-1870)と[2]「ポスト・オスマン」期(オスマン失脚1870年から世界大戦期1914年頃)まで、に大別して分析を行った。 その結果、[1]の時期においてパリ大改造の骨格をなす「パリ市の大十字路(グラン・クロワゼ)」に関して、その一部をなすセバストポール大通りの形成が都市組織図に位置づけられ、その開設前後の都市組織の変遷が明らかになった。また、そこから派生する形の道路として、チュルビゴ大通りの開設前後も示された。他方[2]の時期については、「パリ市の大十字路」と同様に骨格であった「パリ市の環状道路」の一部である、「グラン・ブルバール」の形成ならびに、そのバイパス的な役割を果たすレオミュール通り、エティエンヌ・マルセル通りの再編が明らかとなった。 加えて、[2]の時期では、こうした都市組織という都市の基盤インフラストラクチャーの上に展開される建築類型の面でも、ポスト・オスマン期のいわゆるベル・エポック的な都市景観の構成原理(法規緩和との関係、パリ市の政策との関係において)についても示すことができた。 他方、[1]の時期に関しては、パリ市役所の火災の影響で一次資料が相当数焼失された可能性があり、[2]の時期で検討できたような建築許可申請書のような資料が見当たらず、都市組織図上での変遷の図示にとどまらざるを得ないという結果になった。また、市壁外のフォブールの発展については、本研究で必要な第X区のグラン・ブルバール沿いの変化を追うところまでの作業にとどまっており、さらに郊外への展開も位置付けることができれば本研究はより価値を持ちうると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2年間の研究成果に基づき、3年目となる本年度は、申請書に記した通り次の作業を行う計画である:「重層的に構築されてきた都市組織の都市基盤インフラとしての近現代都市再開発への関与」。次の3つの具体的場所における都市組織の変遷と近現代都市再開発計画との関係を分析する: [1] サン=ドニ門周辺再開発コンクール(1943実施) [2]モントルグイユ歩行者専用区域の整備計画(1989-94以降現在に至る) [3]レ・アール地区での2度の再開発計画(1963年旧市場解体以降現在に至る) 「ポスト・オスマン」期には、急激なメトロポリス化に伴う諸要請に対応する必要から、「パリ拡張委員会」 (1913)の諸提案、「ユルバニスム」の嚆矢とされる「コルニュデ法」(1919)等の法規制定、ル・コルビュジエの「パリ・ヴォワザン計画」(1925)に代表される理想都市計画などが展開された。さらにその後、グローバル化が推し進められたが、具体的な場所における既存の都市組織と深く関連した計画が実施されてきた。[1]は都市境界域のシンボル的な場所サン=ドニ門界隈の再整備である。ここでは、建築単体の提案ではなく「都市景観としての建築コンクール」が掲げられ、既存の都市組織の再編が重要なテーマとなっている。[2]では、ボンヌ・ヌーヴェル地区+マイユ地区のモントルグイユ通りを核とする約20haに及ぶ歩行者専用区域化がパリ市により実施された。都市居住環境としてのアメニティー性の向上をはかりつつ、隣接するレ・アール地区整備との相乗効果が目指されている。[3]は、そのレ・アール地区の2度に渡る大規模再開発であり、周辺の既存都市組織への大きなインパクトを有する。一つ目は、旧市場全面移転(1963)に伴う再開発(F・ブドンらのレ・アール研究の契機となった)、二つ目は、その際建設されたフォーラム・デ・アールの全面刷新計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25/2013年度の研究実施計画に基づき、次のように経費を使用する計画である: 【文献収集・研究発表旅費】東京他、国内【現地調査・資料収集用旅費】パリ現地調査 【データ整理・図面作成補助】仏語手書資料校閲、図版作成、その他【文献複写費】、【通信運搬費(調査資料・現地収集資料送付代)】、【研究成果発表(学会誌投稿料)】
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Research Products
(5 results)