2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23656380
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
米永 一郎 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (20134041)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野 裕 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (80243129)
徳本 有紀 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (20546866)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 物性制御 / 半導体 / 磁気特性 / 転位 / 金属不純物 |
Research Abstract |
本研究は、半導体結晶での欠陥-不純物反応に関する知識を基盤として、シリコン結晶中に高密度に導入された転位欠陥に沿って強磁性不純物のナノ構造複合体を形成し、磁気機能性を有する新しいデバイスを構築することを目的とする。本年度は、強磁性不純物の基礎的な反応過程と実験手法の探索および条件の抽出を行った。(1)変形による高密度転位組織の形成: 素材シリコン結晶より、切り出した試料(3 × 3 × 11 mm3)を900˚Cで種々の変形量まで変形し、その導入された転位の密度がエッチピット法により1010 -1011 cm-2であった。これにより、高密度転位組織を形成するための最適な条件が見出された。(2) 拡散法による転位でのナノ複合体の形成: 転位の組織構造でのナノ複合体の形成に係る基礎的実験条件の抽出と反応を明確化するために、シリコン試料に対して、銅不純物を900˚Cにおいて100時間、真空中で熱処理した。その結果、新奇な、異なるサイズと形状の銅析出物類が欠陥領域で形成されることが電子顕微鏡法、X線回折顕微法により見出された。さらに、ドーパント不純物と酸素が関連することが判明した。(3) 強磁性不純物添加シリコン結晶の育成: チョクラルスキー法により、各種不純物を高濃度に固溶する育成を行い、その中でMn不純物を濃度4 × 1016 cm-3で固溶する1インチ径のバルク結晶が育成された。その結晶について、10Kから室温の範囲でHall係数法によって評価された電気的特性は高純度結晶と同じであった。また、磁化特性について、SQUIDによる磁化測定では、自由電子による常磁性に留まり、Mnに起因する強磁性特性を見出すには至らなかった。今後、より高濃度のMnを添加・固溶する試料を育成ないし製作することを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験手法や評価測定装置に関する基礎的条件の抽出とその把握は順調に推移したが、育成したMn固溶バルク結晶で強磁性特性を見出すにまだ至らず、より高濃度の不純物添加が必要であるため、やや遅れていると判断せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の成果を基盤として、(1) 高密度の転位を含有するシリコン結晶について、拡散法により高濃度のMn、Fe、Ni不純物を導入する。またバルク結晶成長法でMn不純物をより高濃度に添加したシリコン結晶を育成する。(2) 上述の方法で、転位と不純物がなすナノ組織構造を形成し、その磁気的特性の評価を進める。さらに不純物濃度や転位、ナノ構造体の分布間隔等の条件を最適化することでより高精度化し、再現性のある優れた組織構造を実現する。(3) それらの物理機構について、基礎的解明を進める。これらにより、新しい機能性デバイスのモデルを確立して、企業との連携を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
素材である高品質シリコン結晶とその加工成形剤、および金属不純物の購入費として試料を予定する。そして、成果発表のための外国語論文の校閲費と学会出席のための旅費に用いる。
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