2011 Fiscal Year Research-status Report
超臨界流体高活性強酸化剤を用いた新しい貴ガス化合物の創製と圧力誘起金属化
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23656383
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
長谷川 正 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20218457)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 超臨界流体 / 貴ガス / 液化充填装置 / 貴ガス化合物 / ダイアモンドアンビルセル / 赤外レーザー加熱 / 顕微その場観察 / ギガパスカル領域 |
Research Abstract |
貴ガス(第18族元素:He,Ne,Ar,Kr,Xe,Rn,Uuo)がファンデルワールス力によって結合しているAr(C6H5OH)などの包接化合物やHe(N2)11などの分子性化合物ではなく,貴ガス元素と他の元素が化学的に結合している"真の"貴ガス化合物は,たった約45年前にXeの化合物が世界で初めて合成され,その2年後にKrの化合物が合成された.しかしながら,その他の貴ガス特に比較的軽い貴ガスの化合物に関しては,2000年に,ArについてHArFが極低温下において合成されたばかりで,NeやHeについては,未だ真の化合物は合成されていない.また,貴ガス化合物の金属化については,本年にXe化合物について初めて報告されたが,貴ガス元素と金属元素との合金固溶体や化合物は,理論予測はあるものの,未だかつて合成されていない.このような背景のもと,本研究では,"超高圧超高温"の"高活性な超臨界流体強酸化剤"を用いて,新しい貴ガス化合物の創製を目指した.今年度は,特に,従来の超臨界流体システムで扱われる圧力・温度領域である数百MPa,数百Kの領域を遙かに超える超高圧超高温下での貴ガスの超臨界流体を利用できるLASER-DACと貴ガス常圧低温液化充填装置を組み合わせたシステムの開発を行った.その結果,常圧液体領域が狭いために従来液化充填が困難であったArの常圧低温液化充填に成功し,LASER-DAC・貴ガス常圧低温液化充填装置システムを完成させた.このシステムを用いて,LASER-DAC加熱実験を行い,実際にArの超臨界流体が得られたことをLASER-DACモニターによる顕微その場観察によって確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的を達成するためには,合成システムの完成が必要不可欠である.本研究の特徴でもあるギガパスカル領域での希ガス化合物の合成には,ダイアモンドアンビルセルと赤外レーザー加熱を組み合わせたシステムを,さらに,常圧低温液化充填装置と組み合わせた新しいシステムを完成させる必要がある.今年度はこの目的となるシステムの開発と改良に成功し,実際に貴ガスの1つであるArの超高圧高温超臨界流体の創製に成功したため,順調に研究が進んでいると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は,"LASER-DACによる試料合成","光学顕微鏡,ラマン分光,X線回折の3手法を用いた高圧その場測定による試料の評価"という2つの部分に大きく分けられる.貴ガスとして最初はXeを対象とする.今年度に完成した超臨界流体酸素充填技術と貴ガス充填装置を用いて,これらをDAC内に充填する.次に,LASER-DACによって,試料を合成後,上記3手法の高圧その場測定によって,合成試料の,色・透明度,結合状態・格子振動モード,結晶構造,圧縮特性を調査・解明する.それぞれの測定結果を総合的に解析し,貴ガス化合物の創製の判定と相転移および金属化の判定を行う.これらの実験結果を検討し,強酸化剤を他のO-H系やC-H系物質に変更してルーチン的に実験を行う.さらに,Xeの結果を踏まえて,貴ガスとしてArを用いて同様に実験を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
貴ガス化合物を創製する際の原料である高額な貴ガスの購入に使用する.また,合成装置であるダイアモンドアンビルセルのアンビルのダイアモンドは劣化が激しいので,交換用のダイアモンドアンビルの購入に使用する.その他,ダイアモンドアンビルセルを用いた合成実験の際の消耗物品の購入に使用する.国内の旅費に関しては,日本高圧力学会などの関係する学会で発表するための国内旅費に使用する.さらに,ドイツで行われる関係分野の国際会議で発表するための外国旅費に使用する.
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