2011 Fiscal Year Research-status Report
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23656384
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福永 俊晴 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (60142072)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 一広 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (40362412)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ナノ化 / メカニカルミリング / 中性子散乱 / 中性子小角散乱 / 表面構造 / ナノ構造 / X線回折 / 原子配列 |
Research Abstract |
ナノポーラス水素貯蔵材料を創製することにより、表面積を多くし水素吸蔵・放出特性を高める。さらに水素吸蔵による格子歪みをナノポーラス表面に分散させることにより細粒化を防ぐ。またナノポーラス内に種々のアイディアで触媒剤を混入させ、さらなる水素吸蔵・放出特性を高めていくことを目的としている。それ故、超臨界を用いて空孔率の極めて大きな多孔質体すなわちナノポーラスの形態を形成させる前に、ナノ物質の形成とそのナノ物質の水素吸蔵形態そして表面影響を明らかにする必要がある。まずナノ物質を化学的、物理的に形成させる方法があるが、将来の材料の生産性を考慮して物理的にナノ物質を形成させる方法を採用した。物理的方法としてメカニカルミリング法を行い水素吸蔵材料のナノ化を観察した。グラファイトも水素を吸蔵することはすでに報告されているので、グラファイトのナノ化がどこまで進かを調べた結果、直径約30Aのサイズになることが確かめられた。メカニカルミリングによるナノ化は異なっていると考えられるが、非常に有効であることが確認されるに至っている。ナノ物質の特性(水素吸蔵特性など)を調べるにあったって、水素の吸蔵・放出は必ず粒子の表面を経由して行われることからその粒子の表面近傍の構造が水素吸蔵放出によってナノ物質の表面構造がどの様に変わるかを調べることにした。現在、中性子の特徴を利用した軽水素(H)及び重水素(D)の吸放出時の中性子小角散乱実験を行っている。これによりナノ物質の水素吸蔵放出による表見構造変化を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東日本大震災によりJ-PARCに設置されている中性子施設や研究用原子炉JRR3が大打撃を受け、約1年間、その修復のサポートに時間を割いたため、本来の研究やそれに関する中性子散乱実験が行えなかったことは大きな打撃であった。しかし、急遽外国の中性子施設の利用申請を行い、それを利用することにより、一部の実験を行った。その実験データの解析を行っているところであるので、今年の水素関係の国際会議(MH2012)には、これまでの研究報告を行う予定である。本研究は試料作製と水素吸放出特性を調べつつ、中性子散乱による原子レベルの基礎研究を行い、最終的にはナノポーラス水素吸蔵材料見いだしていく研究である。それ故、その研究ルーチンが動いていなかったため、達成度が昨年度は低かったかもしれないが、今後挽回していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、J-PARCの中性子施設の中性子源が動き始め、その中性子源の周りに設置されている装置(NOVA装置など)が動き始め、さらに新たな装置も動き始めたことから、ナノポーラス水素貯蔵材料の水素収蔵放出特性と原子構造(原子配列、表面構造、水素原子の存在位置、水素原子の動き、水素原子と周りの原子との相互作用など)との関係を明らかにする。中性子散乱・回折により水素原子が存在する周りの格子の歪度を解明し、ナノ化による歪みの解放度を定量的に明らかにする。さらに水素吸放出によるナノ物質の表面構造、表面形態がどの様に変化するか調べ、それが吸放出特性に与える影響を定性かつ定量的に解明する。特に水素吸放出時のin-situ中性子散乱実験を行い、母相の原子配列(原子構造)の変化を調べ、その時の水素原子の位置を明らかにする。特に水素が動くことによる母相の原子配列の歪み度の変位を定量的に明らかにすることは重要である。かつその母相の歪み度がナノ化によってどのように軽減されるかを明らかにすることは、今後、ナノポーラス水素貯蔵材料を開発するための原点情報となる。さらに水素吸放出における重要要因となるナノ物質表面の構造変化をin-situ中性子散乱実験(in-situ中性子小角散乱実験)から明らかにすることも重要である。水素原子の動き、特に吸放出を短時間で行わせる必要性からナノ化による水素の拡散度の向上性を中性子準弾性散乱実験によって解明していきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試料作製のための原料の購入とJ-PARC/MLF(中性子)施設への実験旅費に使用したいと考えている。
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Research Products
(1 results)