2012 Fiscal Year Research-status Report
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23656391
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤原 巧 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10278393)
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Keywords | 残光・蓄光特性 / 希土類フリー / ガラス結晶化 / 欠陥構造制御 |
Research Abstract |
科学技術に対する社会要請の中で、特に「環境調和」、「安価・低コスト」、「省エネ」は、二酸化炭素を抑制し省エネ循環を実現する環境調和型の持続社会を構築するために、ますます重要性を増しているキーワードである。本提案ではこれらに応えつつ、萌芽的・挑戦的に推進する研究開発の一例として、これまでにない、ガラスにおけるナノ結晶化や熱処理により誘起される欠陥構造制御を活用する発光特性の発現と環境調和型の蓄光材料開発を進めている。これは、地球のエネルギー源として太陽光エネルギーの中で、従来は効率的に活用されていない光エネルギーを、時間かつ周波数(波長)の観点から高効率利用が可能な形態へと変換させる画期的な技術である。具体的には、元素戦略的な観点から、希少元素である希土類を含まない、希土類フリー酸化物発光体やガラスを用いて、誘起される欠陥構造が起源となり発光の時間特性に変化を与え、この発光の時間制御による蓄光効果が高効率に発現する新材料の開発を目的とする。 当初の目標を、「結晶化ガラスにおける欠陥構造の形成と発光・残光に関する基本特性評価」と設定した。熱処理やガラス結晶化による物質中のナノ構造制御により、誘起される欠陥構造を明らかにする実験として、電子スピン共鳴法や分光学的手法(非弾性光散乱)を試行した。以下に研究成果を示す。 (1)電子スピン共鳴により、典型的な酸化物セラミックスである酸化ジルコニアの残光特性が酸素欠陥に起因する現象であることを明らかにした。 (2)酸化ジルコニアの残光特性は熱処理温度や雰囲気、さらには結晶の構造相転移と強く関連し、各種条件の最適化により希土類フリー残光体として有望であることを示した。 (3)各種のガラス組成の最適化を行い、熱処理によるガラス結晶化により、酸化ジルコニアがほぼ単相で析出する新規ガラス系の発見に初めて成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
太陽光スペクトルの中で、現在は有効に活用されていない紫外領域の光エネルギーを吸収・蓄光し、シリコン系太陽電池にて高効率な光電変換が可能となる可視光へと変換し、従来は発電が全く期待できない夜間における太陽光発電を可能とする革新的な新機能を希土類フリーの新材料によって実現する萌芽開発を進めている。 目標である「欠陥構造の形成と発光・残光に関する基本特性評価」に対して、熱処理やガラス結晶化によるナノ構造制御により、誘起される欠陥構造を明らかにする実験として、次の3通りの実験方法を試行した。(1)光吸収スペクトルによる測定と欠陥構造の解析、(2)ボソンピークによる分光学的手法と結晶化のその場観察、(3)電子スピン共鳴(ESR)測定による不対電子型欠陥の解析である。特に(2)については、ガラス結晶化の初期過程を明らかにする、これまでにはない世界初の手法として、我々のグループのオリジナルな測定法であり、関連学会からも高い評価を受けている。 初年度の研究成果により選定された候補ガラス系をもとにして、結晶化および熱処理による高効率な欠陥生成を試行した。ガラス結晶化や熱処理プロセスの各種条件が欠陥生成に与える影響を明らかにし、さらに、ガラス系の出発組成についても検討を行い、ターゲット結晶である酸化ジルコニウムがほぼ単相で析出する諸条件の最適化に成功した。具体的には、結晶化・熱処理処理温度や時間、昇温・急冷速度や雰囲気など、各種の条件が欠陥生成に与える効果を明確にし、欠陥の種類・量に加えて、エネルギー準位(残光寿命)をある程度制御可能な結晶化プロセスの確立が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
第3年度の目標を「ガラス結晶化による発光・残光特性の向上」として進めたい。これまでの研究成果により、選定された候補ガラスやセラミックス系の結晶化および熱処理による高効率な欠陥生成が期待される。次年度においては、結晶化や熱処理プロセスの各種条件が生成欠陥や発光・残光特性に与える影響を明らかにし、さらに、出発組成であるガラス系についても特性向上の点から再度の検討を行う。 具体的には、結晶化・熱処理処理温度や時間、昇温・急冷速度や雰囲気など、各種の条件が欠陥生成や発光・残光特性に与える効果を明らかにし、欠陥の種類・量に加えて、エネルギー準位(残光寿命)をある程度制御可能な結晶化プロセスの確立を目指す。 キャリア捕獲中心である欠陥の性質は、機能性である蓄光特性(寿命)に直接関わるキーパラメータであり、この新技術・新材料が実用に供するかどうかを見極める重要な実験研究となる。例えば残光寿命の点からは、一夜間に相当する10時間程度が目標となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
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Research Products
(5 results)