2011 Fiscal Year Research-status Report
ナノプローブを用いたS/TEM内インターカレーション過程その場観察の試み
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23656398
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
武藤 俊介 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20209985)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 可視化 / 電子顕微鏡 / ナノ材料 / リチウム電池 |
Research Abstract |
本研究はTEM用STM測定試料ホルダーを改良し、インターカーレーション反応過程をナノスケールでその場観察・化学状態測定を行うことを試みるものである。その具体的かつ喫緊の要求が高い応用例として次世代リチウムイオン電池正極活物質として期待されているLiFePO4の充放電過程におけるリチウムイオンの移動とそれに伴う構造相転移を透過型電子顕微鏡(TEM)と電子エネルギー損失分光(EELS)によってその場観察し、そのための試料マニピュレ-ションシステムを開発することにある。 23年度は本経費によってグローブボックスを購入し、試料を大気曝露すること無くTEM内へ挿入するシステムを構築した。本システムではグローブボックス内露点-40℃、残留酸素・水分量1ppm以下という要求仕様を達成した。 また予備実験として、充電50%のLiFePO4正極についてSTEM-EELSスペクトラムイメージを取得し、ナノ粒子である活物質のリチウム脱離領域可視化を行った。この結果、100%放電状態から半分リチウムを引き抜いた状態では、100nm以上の大きな粒子の外側がFePO4であるコアシェル構造を示す一方、逆に100%充電状態からリチウムを挿入していく過程では必ずしもコアシェルのような明確な二相分布になっていないことが明らかになった。また正極全体としては電解液に接している表面側から集電箔側にわたって特に充放電過程に依存する二相分布の濃度勾配は見られなかった。以上から本正極の充放電履歴の原因はミクロなリチウム挿入・脱離反応メカニズムに帰するべきであり、さらに二相境界の結晶学的な情報を明らかにする必要がある。以上の成果を2012年3月の日本金属学会春期講演大会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度に、リチウムイオン二次電池の電極の取り扱いに対して一般的に要求されるスペックを満たすグローブボックスを構築することができ、別経費で導入した不活性ガスによる試料搬送システムと組み合わせて、作製した試料を大気曝露すること無くグローブボックスからTEMへ挿入することが可能となった。また予備実験としてLiFePo4正極のFIBによる薄片作製条件が確立し、STEM-EELSスペクトラムイメージによってリチウムの可視化技術を確立している。さらにこれまで失われていた活物質粒子の結晶学的情報を効率よく取り出すための電子回折の自動取得システムも導入した。これらは次年度の動的観察における要素技術であり、あとは動的観察に有効なサブミクロンサイズの電池システムを作製するのみとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
○固体電解質との複合ナノプローブチップ作製 双方向リチウムイオン移動(充放電過程)を観察するために、電位を印可できる負極+固体電解質の複合ナノチップを作製する。これには前年度のナノチップ作製における技術開発に負うところが大きい。○充放電過程における化学結合状態マッッピング 本研究で使用するTEM/STM試料ホルダーは当研究グループ現有の熱電子銃S/TEM(JEM2100S/TEM)と本学所有の収差補正電界放出型電子銃S/TEM(JEM-ARM2100F)と共用できる。このため実際の観察にはそれぞれの特性を生かし、使い分けを行う。熱電子銃TEMの空間分解能は1nm、収差補正器は0.1nmであるが、他方軽元素のLi分析には熱電子銃TEMが適切であることがわかっている。これらによって、当研究室の専売特許であるSTEM-EELSスペクトラムイメージングによる化学結合マップを作成、この材料におけるリチウム引き抜き過程の全貌を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度の直接経費は繰り越し額7.3万円を含めて77.3万円であり、主として成果報告のための国内・国外旅費に使用予定である。繰り越し額は投稿中の発表論文の英文校閲、投稿費に使用される予定である。物品の購入予定は無い。
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