2011 Fiscal Year Research-status Report
微小液滴反応場へのマイクロ波照射による微粒子表面修飾法の開発
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23656412
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
佐藤 正明 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 教授 (70128768)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 微小液滴 / ミスト / 反応場 / マイクロ波 / 微粒子 / 表面修飾 |
Research Abstract |
まずは、微小液滴反応場を作るための装置として、超音波振動子を組み込んだ有機液体ミスト噴霧装置を作成した。また、この有機液体ミストへマイクロ波の照射ができるように、現有していた四国計測工業社製マイクロReactorを改造して使用した。 有機液体ミストの作成に関しては、有機液体を入れた容器に組み込んだ超音波振動子の設置場所と強度を工夫した結果、種々の有機液体を微小な液滴ミストにして噴霧させることができるようになった。しかし、困難なことに有機液体にアルミナ微粒子を分散させた系に超音波振動子を作用させても、液滴ミストの内部にアルミナ微粒子が取り込まれたものは少量にとどまった。そこで、有機液体に分散させる微粒子の種類を変えて種々検討したところ、活性炭の微粒子が最適であることが判明した。また、この活性炭はアルミナよりもマイクロ波を良く吸収して熱エネルギーに変換する能力が高いため、マイクロ波による化学反応を実現させるという観点からも好都合であった。次の問題点は、如何にして有機液体ミストをマイクロ波が強く照射される部位に誘導し、反応が完了するまでの滞留時間をどのように確保するかの流路設計にあった。本来、流路としてはマイクロ波の減衰が小さい石英管を用いるのが一般的であるが、マイクロ波照射装置の内部に配置することは困難であったので、形状がフレキシブルなテフロン製の容器を加工して用いることにした。 その結果、活性炭の微粒子を分散させたアクリル酸の液体に熱分解が容易な過酸化物系のラジカル開始剤を溶かして液滴ミストを作成することが可能となり、マイクロ波照射によって、アクリル酸の重合反応を微粒子表面で実現し、活性炭表面がポリアクリル酸で覆われた微粒子を作ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では微小な液滴(ミスト)をミクロな反応場として用い、マイクロ波の照射により、この液滴(ミスト)内部で化学反応を誘起させて、液滴内部に取り込まれた微粒子の表面に化学修飾を施すとともに、この反応系を利用して種々の機能性微粒子を簡便に合成する新規な手法の開発を目的としている。 平成23年度は、有機液体ミストを連続的にフロー系で発生する装置の作成と、この有機液体ミストにマイクロ波を照射するための流路設計・製造に取り組み、基本的な反応系を構築することができた。また、活性炭の微粒子を有機液体ミストの微小液滴内に取り込み、これをマイクロ波の受容アンテナとすることで、マイクロ波のエネルギーを効率的に熱エネルギーへ変換して微小液滴内でビニルモノマーの重合反応を起こすことができた。当初の研究計画では、有機液体ミストに導入する微粒子としてはアルミナを考えていたが、実際に平均粒径が10ミクロンのアルミナ粉末を用いて実験したところ、大部分が元の液相に分散されたままで、液滴(ミスト)に取り込まれたものは少なかった。 従って、実施計画書に記載したアルミナでは、まだ成功していないので、平成23年度の達成率100%とは言えないが、超音波振動子で作成した有機液体ミストにマイクロ波照射を照射して重合反応が誘起された点において、平成23年度計画の根幹部分は達成されたと考えられるので、達成率は90%と自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度は超音波振動子を用いて有機液体の微小な液滴ミスト作成したが、超音波振動子を用いる方法では活性炭の微粒子が取り込まれた液滴ミストが得られたものの、当初の目的としたアルミナや酸化チタンなどの取り込みは困難なため、応用範囲が限定される可能性が高い。そこで、平成24年度は霧吹きの原理を応用した液滴ミストの発生装置を別途開発して、マイクロ波照射装置と組み合わせることにより、広範な触媒微粒子や機能性微粒子の合成にまで適用して検討する予定である。 本反応システムを用いる機能性微粒子の合成では、固体微粒子の外側を別の成分で取り囲んだコア&シェル構造を有する微粒子が生成すると考えられる。例えば、外側の成分としてタンパク質や人工高分子をコーティングすることや、触媒機能を有するパラジウムや白金などを固定することなどもターゲットとなり、コア&シェル構造に基づく高度な機能や高活性な触媒などが期待される。一方、コア&シェル構造の内側の成分として光触媒活性を有する酸化チタンなどを用いると、光機能が付与された新規の触媒が得られる可能性がある。また、これらの反応は一連のフロー系の中で実現できるので、この流路内に化学修飾を施したい基板を設置すれば、その基板上にこれらの微粒子が積層されることになるので、新たな機能材料開発に進展することも期待される。 以上、新規の多層構造体微粒子の合成を基として、新たな機能の発現にまで進展させたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は新規に霧吹きの原理を応用した液滴ミストの発生装置を組み込むために、市販されている絵画用のエアーブラシ(10万円未満)を購入して改造することを考えている。また、平成23年度に用いた超音波振動子を用いる液滴ミスト製造装置についても、パワーを上げる等の改造を施して、液滴ミストに取り込まれる微粒子をアルミナや酸化チタンなどにまで拡張できないかを検討する予定である。 また、今年度に解決されなければいけない問題点の一つは、生成した微粒子の単離方法である。希薄な液滴ミスト内での反応により生成した微粒子は気相中をただよっており、気相の流れに従って容易に系外へ逃げ出してしまうので、集めるのが難しい。そこで、平成24年度は静電気や吸着力等の引力を利用する微粒子収集システムをコンパクトに改造して組み込みたい。この開発費を物品費から支出する。また、コア&シェル構造のシェルの部分としては、各種の高分子材料や貴金属などを、そして、コアの部分は無機多孔質材料や無機半導体微粒子などを用いて検討する予定である。これらはいずれも物品費の項目から支出する。 本研究では多層構造微粒子の新規合成法を開発すると共に、得られた微粒子の形状や物性評価についても積極的に取り組んでいきたいと考えているが、研究代表者1名で研究を遂行しているので、装置の改良や実験結果の整理等、実験補助をしてくれる非常勤職員を週1回程度雇用し、謝金の項目から支出したい。
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Research Products
(1 results)