2012 Fiscal Year Research-status Report
高保磁力・高耐熱性異方性ナノコンポジット磁石の開発
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23656420
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
杉本 諭 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10171175)
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Keywords | サマリウムコバルト / 保磁力 / ナノ粒子 / 水素アークプラズマ反応法 |
Research Abstract |
目的:永久磁石は低炭素社会の実現へのキーマテリアルとなっているが,現在最強のNd-Fe-B系磁石では,高保磁力,高耐熱性を得るため,資源リスクの高いDyを添加しなければならない。このためDyを含まない永久磁石の開発が切望されている。一方,ソフト磁性相 とハード磁性相とをナノサイズで複合化させて高磁気特性を狙うナノコンポジット磁石は長年唱えられているが,磁化容易軸を一方向に揃えた異方性磁石ができず,高い磁気特性が未だに得られていない。本研究では,Dyなしでも高保磁力,高耐熱性を実現できるSmCo 5系化合物に着目し,ナノ粒子の作製を目指す。さらに、Fe系ナノ粒子粉末と混合することにより,Nd-Fe-B系磁石を凌駕すると期待される異方性ナノコンポジット磁石の開発を目指す。平成24年度は水素アークプラズマ反応法を用いてSmCo5のナノ粒子の作製を試みた。 実験方法:高周波溶解でSmCo5合金を作製し,水素アークプラズマ反応法を用いてナノ粒子の作製を試みた。得られたナノ粒子の磁気特性を振動式磁力計(VSM)で測定し,組織を走査電子顕微鏡(SEM)で観察した。 結果と考察:(1)原料合金と粉末の組成にはずれが生じるが,微粒子の作製が可能であることがわかった。(2)Coを多くした原料合金を用いることにより,SmCo5組成に近い微粉末が形成することができた。(3)飽和磁化47.8Am2kg-1,残留磁化32.5Am2kg-1,保磁力0.65MAm-1なる磁気特性が得られた。(4)微粉末の平均粒径は58.5nmであった。(5)本研究で得られた保磁力は0.65~1.03MAm-1であり,他の方法よりも高い保磁力が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来の報告における保磁力よりも高い1.03MAm-1という保磁力を有し,平均粒径も58.5nmのSmCo5ナノ粒子が作成できた。また,その組成の制御も,水素アークプラズマ法に用いるインゴットの組成を制御することによって可能であることも確立できた。以上より,当初の計画通りおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はナノコンポジットのためのソフト磁性相を作製するため,同様の水素アークプラズマ法によりFe系合金のナノ粒子を作製し,その磁気特性,組織を調べる。具体的には,高周波溶解などによってFe系合金を作製し,その合金を用いて水素アークプラズマ法にてナノ粒子を作製する。得られた粒子はグローボックス内で回収する。さらに本年度で作製可能となったSmCo5ナノ粒子と混合してナノコンポジット化を図る。以上の過程によって得られた試料の相をXRDにて同定し,組織をSEM,TEMにて観察する。また,磁気特性をVSMで測定する。以上の結果を基に,作製条件と磁気特性および組織の関係を明確化し,ナノコンポジット磁石粉末の可能性を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度,研究に用いる設備は現有設備を使用するつもりであることから,新たな設備の導入は行わない。したがって,次年度の研究費は,主として消耗品費と学会発表などでの旅費や論文投稿料などに使用する予定である。
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