Research Abstract |
まず,抵抗加熱式真空蒸着装置を用いてPd-Cu-Ge金属ガラス薄膜をSiウエハーならびに板ガラス基板上に作製した.蒸着を繰り返した結果,ガラス転移温度が約50℃のPd_<40>Cu_<20>Ge_<40>に近い組成の薄膜試料が得られた.その中で組成がPd_<48>Cu_<21>Ge_<31>ならびに膜厚が約66nmの薄膜について,ガラス基板上に成膜した試料のX線回折パターンを測定したところ,アモルファス状態であった.そこで,この薄膜試料を加熱しながら電気抵抗を四探針法により測定した.電気抵抗は始め,液体金属にしばしば見られるように,試料温度の上昇に伴い直線的に低下した.65℃付近で電気抵抗の負の傾きがわずかに大きくなったことから,ガラス転移を生じたと考えられる.更に加熱を続けると107℃付近で負の傾きが小さくなったことからナノ結晶化が開始し,135℃付近で電気抵抗が約35%まで急激に低下した.その後の電気抵抗の傾きは正となったことから,完全に結晶化したと考えられる.念のため,同じ組成の液体急冷リボン材を作製し,示差走査熱量計で相転移温度の確認を試みたが,リボン材に含まれるガラス相が少なかったため不可能だった. Siウエハー基板上に作製したPd_<48>Cu_<21>Ge_<31>薄膜試料を加熱した後の密度,膜厚,表面粗さの変化を調べるため,大気中で温度T_aの乾燥器中で試料を15分間保持して空冷した後にX線反射率測定を行った.電気抵抗測定結果から,T_aは80℃,120℃,170℃の三種類を選択した.密度,膜厚,表面粗さのいずれも170℃で加熱した場合に大きく変化した.膜厚が加熱温度の上昇と共に減少したのは構造緩和の効果が含まれると考えられる.しかし,80℃まで加熱してガラス転移を経た表面粗さはあまり変化がなかった. 未使用の試料を数ヶ月後に肉眼で観察すると,表面に白っぽい何かが生じていた.これは薄膜に含まれるCuが酸化している可能性がある.表面に生じた酸化膜によってガラス転移を経ても表面の粗さ等が拘束されるため,表面粗さの変化が見られなかった可能性がある.今後,Cuの代わりにNiを使うなど耐酸化性を向上させる必要がある.
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