2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23656423
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
荒木 孝二 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (40134639)
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Keywords | 個体発光 / 分子内水素結合 / 励起状態 / 高分子フィルム / 発光制御 |
Research Abstract |
分子内水素結合に依存した分子発光を示す2-(2'-ヒドロキシフェニル)イミダゾピリジン(HPIP)および置換HPIPを用い、媒体による分子内水素結合の状態変化で発光特性を制御するという新しい制御指針に基づき、種々の高分子フィルム媒体中でのHPIP誘導体の発光特性を解析した。その結果、以下に示すような知見を得た。 1.HPIPに異なる置換基を導入した各種HPIP誘導体を合成し、いずれも固体状態においてのみ、可視領域に励起状態分子内水素移動(ESIPT)にともなう高効率ESIPT発光を示すことを明らかにした。さらに各誘導体の励起状態解析をおこない、ESIPT発光特性は置換基の電子特性から説明できることを明らかにした。 2.すでに結晶多形に依存した異なる発光を示すことが明らかとなっている6-シアノHPIP(CN-HPIP)とHPIPを用い、極性の異なる高分子媒体中に混合(1 w%)して薄膜を作成したところ、極性の高い高分子媒体を用いた薄膜の固相発光は、固体で観測されるESIPT発光に加えて、分子内水素結合を形成していない種からの青色発光を示した。薄膜の発光色は青か橙まで高分子媒体の極性で大きく変化したが、これは分子内水素結合の状態が各種媒体中で異なるために、青色発光と緑から黄色のESIPT発光との比率が変わるためであることが判明した。 3.また、媒体による分子内水素結合状態の変化がより大きいCN-HPIPでは、発光色変化がより顕著に表れること、およびHPIP誘導体/高分子の比率を変えることでも発光色変化が起きることを見いだした。 以上の結果から、分子内水素結合の状態を媒体の極性で変化させて発光色を制御するという方法が有効であり、ESIPT発光を示すHPIP誘導体が発光制御可能な高効率有機固体発光材料となることを実証できた。
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