2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23656428
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
酒井 明 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80143543)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ナノポーラス材料 / 界面熱抵抗 / フォノン界面反射 / 超流動ヘリウム / 超伝導トンネル接合 |
Research Abstract |
ナノスケールにおける熱輸送は学問的にも実用的にも重要な問題であり,これからの研究発展が期待される領域である.実用的なナノ構造材料であるナノポーラス材料については,その熱輸送特性はほとんど手付かずのまま残されている.細孔が非常に小さく表面積の大きなナノポーラス材料の熱輸送では界面における熱抵抗が重要であるが,粘性が無く内部に温度勾配が発生しない超流動ヘリウムはナノ細孔内に浸透して材料の全面積と接触するため,ナノポーラス材料の界面熱抵抗を測定するためには最適の媒体である.本研究では,超伝導トンネル接合から熱フォノンを発生させ,これが液体ヘリウムとナノポーラス材料との界面で反射される強度を測定して,ナノポーラス材料の界面熱抵抗を評価する実験を実施する. 平成23年度は界面熱抵抗測定用クライオスタットと周辺設備の導入を行った.トンネル接合にAlを使用する都合上,試料室はAlの超伝導転移温度である1.2K以下に冷却する必要がある.ここでは液体He3を使用せずに,液体ヘリウム溜めの排気口にオリフィスを設けて超流動フィルムによる熱損失を防止し,大きな排気容量のポンプを用いて液体He4を減圧する方式で1Kの実現を目指すこととした.しかしながらクライオスタットの設計に時間を要し,またクライオスタットの電流導入端子が溶接時にリークを起こすなどのトラブルが多発して,クライオスタットの完成が大幅に遅れることとなった.このため,まだ本格的な測定を行うには至っておらず,現在遅れを取り戻すべく,準備を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
界面熱抵抗測定用クライオスタットの完成に時間を要したことが全体の遅延要因となっている.一つには液体He3を使用せずに,液体He4の減圧で1K達成を目指すこととしたため,クライオスタットの減圧系がやや通常のHe4クライオスタットとは異なる構造になっていることも原因している.また周辺設備などはクライオスタットに整合するように配備・設置しなければならにため,合わせて遅れが生じている.
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Strategy for Future Research Activity |
装置に関しては,測定準備を整えることが急務であり,界面熱抵抗測定用クライオスタットにより1.2K以下の所用の温度が実現できることを早急に確認する. ナノポーラス金属試料の作製に関しては,Si基板上へのAuAg合金の蒸着とdealloyingは作製プロセスの完習までに時間を要すると思われるため,比較的容易に作製できるナノポーラス金フィルムをSi基板に接着する方式を採用する.直接蒸着の場合と比較すると,接着層により反射強度がいくらか低下すると思われるが,先ずは結果を得ることを優先する.また,ナノポーラスSi, SiC,Znの作製と界面熱抵抗測定については,時間に余裕のある場合の実験項目にすることとし,先にナノポーラス金フィルムの実験に注力してゆく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主要な備品類については平成23年度に購入を済ませているため,平成24年度の研究経費は主として消耗品類の購入に使用する.具体的には,第一に液体窒素・液体ヘリウムの使用であり,1回の実験で30リットル程度の液体ヘリウムの消費を見込んでいる.材料関係ではSi基板およびナノポーラス金フィルムの作製,等が主なものである.計測装置は既存の装置を使用できるが,消耗品類として配線・同軸ケーブルやコネクタ類,小型の増幅器ユニットおよびフィルタ等の電子部品,を購入する.また真空・低温関連の部品も若干購入を予定している. 旅費は,ナノポーラス金フィルムの作製に関する打ち合わせ(東北大学WPI),および国内学会での成果発表,に充当する.
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