2011 Fiscal Year Annual Research Report
微小部熱伝導率測定による界面熱抵抗の可視化と定量評価
Project/Area Number |
23656433
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田中 克志 神戸大学, 工学研究科, 教授 (30236575)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2012-03-31
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Keywords | 熱拡散率 / サーモリフレクタンス法 / 熱電材料 / 粒界熱抵抗 |
Research Abstract |
熱電材料は熱伝導が小さいほど性能が向上する材料として知られているが,熱電材料では高い電気伝導を維持しながら熱伝導を低下させる必要がある.そのため,内部の空洞化などの高次構造制御によって熱伝導を低下させることができず,材料そのものの物性が性能を左右する.一方,同じ緻密材の熱電材料においても結晶粒の微細化に伴い電気伝導はそれほど大きな影響を受けないが熱伝導が大きく低下し,結果として熱電性能が向上することが知られている.この現象は結晶粒界における散乱機構の違い,すなわち,電気伝導がフェルミエネルギー付近に限られた比較的大きいエネルギー領域の電子のみによるのに対し,熱伝導は広いエネルギー領域,特に波長の長い低エネルギーのフォノンが大きな役割を果たしているという違いで定性的に説明されている.このように結晶粒界などの面欠陥の導入が熱伝導の低下に有効であることは知られているが,どのような面欠陥が熱伝導の低下により有効なのか,言い換えると面欠陥の性格による熱抵抗の大きさの違いは全く知られていない.例えば,Σ3粒界のような対応粒界に較べて高次の大傾角粒界は熱抵抗が大きいことが直感的に予想されるが,それは本当なのか.その違いが評価されたことは無く,違いがあることさえ示されていない.本研究では,このような違いを検知するため顕微鏡下で熱伝導特性が測定可能なサーモリフレクタンス法の測定精度の向上を目指した. これまでのサーモリフレクタンス法による熱拡散率のそくていでは点,または面光源で加熱・試料温度の検出を行う方法を取ってきた.この方法は熱物性顕微鏡で一般的な方法であり,試料各部の熱拡散率の測定には適した方法である.本研究では,周期加熱レーザーを直線形状とすることで試料内の伝熱方向を限定するとともに熱波の減衰を抑える工夫をした.これにより周期加熱レーザーの変調周波数を高くすること,および光源から遠く離れた場所まで熱波の伝播を測定することが可能となり,熱拡散率の変化に対する分解能が向上した.さらに熱の伝達方向を制限することで異方性材料における熱拡散率の異方性を測定することも可能となった.現在のところ,粒界の熱抵抗の測定が十分できているとは言い難いが,測定のノウハウの蓄積が進んでおり,粒界の性格の違いによる熱抵抗の測定も可能なレベルに達しつつある.
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