2011 Fiscal Year Research-status Report
粒界機能の積極的利用による新規多結晶系太陽電池材料の創出
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23656435
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
連川 貞弘 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (40227484)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 太陽電池 / CdTe / 多結晶 / 粒界 / ケルビンプローブ原子間力顕微鏡 / ショットキー障壁 / 再結合損失 |
Research Abstract |
結晶粒界は粒内とは異なる原子配列のため,ユニークな電子構造をもつことから,しばしば特異な特性・機能を発現する.したがって,従来,変換効率低下の主因と考えられてきた結晶粒界を逆に積極的に利用することにより,新規な高効率多結晶太陽電池材料の開発が期待される。本研究では,粒界電子物性を明らかにし,粒界機能を有効に発現させるための粒界設計について検討することを目的としている.平成23年度は,化合物系太陽電池CdTeの粒界電気特性に及ぼす粒界性格依存性および塩素処理の影響について,主にケルビンプローブ原子間力顕微鏡(KFM)法を用いて検討した。1.CdTe多結晶材料の作製および粒界性格の決定:ガラスカプセル法を用いてバルク多結晶CdTeを作製した。その後,EBSDを用いて粒界性格を決定し,粒界性格分布を定量評価した。Σ3粒界が高頻度(60%)に存在し,対応粒界頻度が約80%と非常に高いことが明らかとなった。2.粒界ポテンシャル障壁高さの粒界性格依存性:粒界障壁高さは粒界性格に依存し,約23-82eVであった。対応粒界に比べ,ランダム粒界の障壁高さが高い。一方,一般的に,電気的には不活性であると考えられているΣ3粒界の障壁高さの測定値には大きな分布があることが見出され,Σ3粒界が必ずしも不活性な粒界であるとはいえないことが明らかとなった。この原因については,今後の研究で明らかにしていく予定である。3.粒界ポテンシャル障壁に及ぼす塩素処理の影響:塩素処理により,多結晶CdTe太陽電池の変換効率が向上することが知られている。塩素処理後に粒界障壁高さを測定した結果,障壁高さが高くなることを見出した。このことから,塩素処理による変換効率向上は,粒界のパッシベーション効果ではないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書記載の平成23年度計画のうち,CdTe多結晶材料の作製,粒界性格の決定および粒界ポテンシャル障壁高さの評価は予定通り進行しており,その中から新たな研究課題も見出されている。また,平成24年度に計画していた,粒界障壁高さに及ぼす塩素処理の影響に関する研究を前倒しして開始した。一方,粒界構造の高分解能電子顕微鏡観察およびCP-AFMを用いた粒界局所電気伝導度評価については,現在,準備を進めている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には交付申請書に記載した予定で研究を推進するが,平成23年度において実施できなかった,粒界構造の高分解能観察にくわえて,塩素処理した後の粒界構造をSTEM-HAADF法で観察し,Cl元素の粒界における存在位置を明らかにする。その知見を基に,第一原理計算手法を用いてCdTe粒界の電子構造に及ぼすClの粒界偏析の効果について検討し,塩素処理による変換効率向上の起源を明らかにする。これらの研究より,光ー電気変換効率向上のためにどのような粒界機能をどのようにして発現させることができるのか検討する.また,H23年度の研究において見出されたΣ3粒界の特異な粒界電気特性について,その原因を粒界構造の観点から検討したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
局所的なI-V特性を評価できるCP-AFMシステム(現有のAFMのオプション)を新たに購入し,CdTe粒界の光電特性の測定を行う予定である。その他は,物品費として,主にKFM測定やCP-AFM測定用試料の表面処理用の消耗品,旅費として成果発表旅費,その他として,STEM-HAADFの使用料などに用いる予定である。
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