2012 Fiscal Year Research-status Report
粒界機能の積極的利用による新規多結晶系太陽電池材料の創出
Project/Area Number |
23656435
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
連川 貞弘 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (40227484)
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Keywords | 太陽電池 / CdTe / 粒界 / 第一原理計算 / CP-AFM / 電気伝導 |
Research Abstract |
結晶粒界は粒内とは異なるユニークな電子構造をもつことから,しばしば特異な特性・機能を発現する。したがって,従来,変換効率低下の主因と考えられてきた結晶粒界を逆に積極的に利用することにより,新規な高効率多結晶太陽電池材料の開発が期待される。本研究では,粒界電子物性を明らかにし,粒界機能を有効に発現させるための粒界設計について検討することを目的としている。平成24年度は,CdTeの粒界電子構造に及ぼす塩素偏析の影響について,第一原理計算手法を用いて検討した。また,局所電気伝導度を評価できるCP-AFM装置を構築し,粒界の局所伝導度の測定を試みた。 1.CdTeの(111)Σ3粒界について第一原理計算を行い,粒界の電子構造を検討した。(111)Σ3粒界はTeあるいはCdをコアとする極性界面(粒界)となるが,粒界の存在により,Ev+0.67 eVの比較的深い位置に欠陥準位が形成されることが明らかとなった。また,結晶粒内では,Cl原子はTe位置に置換することが報告されていることから, (111)Σ3粒界のTe原子位置をClに置換し,電子構造に及ぼすCl偏析の影響について検討した。Cl原子の置換により,粒界に起因する欠陥準位の位置はほとんど変化しないが,状態密度が著しく低下するとともに,価電子帯上端に近い位置にアクセプター準位が形成され,さらにTeコア粒界の場合にはEv+0.83eVの深い位置に新たな欠陥準位が形成されることを見出した。 2.予めEBSDを用いて粒界性格を決定したシリコン多結晶を用いて,CP-AFM法により粒界の局所電気伝導性の評価を行った。一般に,粒界は電気伝導の抵抗となることが知られているが,CP-AFM測定の結果,粒界に沿って電流が流れる場合には,粒内よりも電気伝導性が高くなること,ランダム粒界の方が対応粒界よりも電気伝導性が高いことを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H23年度に前倒しして実施したCdTeの粒界障壁高さに及びす塩素処理の影響に関する実験結果を理論的に検討するため,本年度は,当初計画に含まれていなかった第一原理計算手法を用いて粒界電子構造に及ぼす塩素偏析の影響について検討し,新しい知見が得られている。また,昨年度実施予定であったCP-AFM法を用いた粒界の局所電気伝導性に関する実験も実施し成果が得られつつある。ただし,HRTEMおよびHAADFを用いたCdTeの粒界構造の観察は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度は,これまでの研究成果に基づいて,薄膜多結晶シリコン太陽電池の高効率化に向けた粒界設計について具体的な方策を検討し,実証実験を行う予定にしている。また,これまでの研究成果をまとめて公表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の遂行上,SEM/EBSDを用いた粒界性格の決定が重要な位置付けとなる。現有のSEM/EBSD装置は設置以来15年を過ぎており,測定中に観察エリアが汚染され,その後のKFMやCP-AFM測定等の特性評価に支障が出てきている。この問題を解決するために,次年度研究費においてプラズマクリーナーを購入することを計画している。
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