2011 Fiscal Year Research-status Report
プラズモンアンテナ型センサを用いた超高分解能固液界面その場解析手法の確立
Project/Area Number |
23656470
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
本間 敬之 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80238823)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳沢 雅広 早稲田大学, 付置研究所, 研究員 (20421224)
齋藤 美紀子 早稲田大学, 付置研究所, 准教授 (80386739)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 固液界面 / プラズモニクス / 表面増強ラマン散乱 / めっきプロセス / 密度汎関数法 / 分子吸着 |
Research Abstract |
研究目的:本研究では、サブナノメートルオーダーの深さ分解能をもって固液界面における電気化学反応の1原子・分子層レベルのその場解析を可能とする新規な計測手法を確立し、従来未知であった単分子レベルの固液界面反応の解明に挑戦することを目的とする。研究成果:本年度は、共焦点ラマン分光装置を改良し、2段ピエゾステージと連動させて連続的に0.2nmステップで深さ方向に自動走査する機構を開発した。本機構の性能を実証するためにグラファイトの0.3nmの周期構造をラマンスペクトルの深さ方向分布として測定することに成功した。またハードディスク表面のサブナノメートル厚のダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜の、膜厚方向の結晶構造の解析に成功した。次に、同心円プラズモンアンテナ構造を有する超高感度なセンサを開発し、各種液体に浸漬して測定したところ固液界面における吸着分子の表面増強ラマン散乱スペクトルの測定に成功した。具体的には、Cuからなるプラズモンアンテナセンサをヒドラジン溶液に浸し、Cu表面から0.5nmステップで深さ方向のラマンスペクトルの変化を観察したところ、ヒドラジンの窒素原子がCuに吸着していることが明らかになった。本知見を密度汎関数法(DFT)による分子軌道計算の結果と比較してその妥当性を証明した。さらに、Cu上におけるヒドラジンと次亜燐酸の二種還元剤の吸着状態を調べたところ、吸着サイトのスペクトルが低波数側にシフトしたことからヒドラジンの上に次亜燐酸が配位することがDFT計算と併せて明らかになった。このように理論と実験の両面からCu固液界面における還元剤間の相互作用が明らかになり、触媒活性のない基板上へのめっきが可能なヒドラジン添加次亜燐酸めっき浴の析出メカニズムの解明への重要な足掛かりを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではサブナノメートルオーダーの深さ分解能で固液界面が観察できる計測手法の開発を目的としており、初年度である本年度は計測系の立ち上げと最適化に主眼を置いた。その結果、0.2nmステップで深さ方向測定が可能な手法を開発し、これを用いてグラファイトの層状周期構造の測定に成功し、当初目的を達成することができた。さらに、本手法を用いてCu表面上のヒドラジン/次亜燐酸二種還元剤における固液界面測定に成功したことから、本法のさらなる発展性への足掛かりも得た。なお、実験を進めるにあたり、このような極微領域の顕微解析系では避けがたいドリフト(計測中に試料や測定系が熱膨張や機械的ストレスの緩和などによりナノメートルオーダーで移動し、フォーカスを正確に保持できなくなる現象)の影響がみられた。そのために試料固定方法や測定手順などに対して種々の対策を講じ、前述のような成果を得ることができたが、次年度はまずこの点の検討をさらに進めていきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究で、0.2nmステップでの解析を実現するなど、本研究の手法の有用性を明らかにしたが、測定系に発生するドリフトの解決が課題となった。そこで、今後は、まずこのドリフトを抑えられるように測定系の改善を行い、分解能のさらなる向上を図る。さらに、固液界面反応系の解析のための電解セルに関しても最適化を行う。今年度はいくつかの試行錯誤的な形式での測定を行い、セル設計に関する実際的なノウハウを蓄積することができた。これを基に、上記ドリフトの面も考慮しながら、より安定かつ高分解能で計測可能なセルの設計および試作を行い、種々の固液界面反応系の解析へと展開する。特に、無電解めっき反応系の解析は大きな課題であり、界面における還元剤や添加剤といった分子種の吸脱着や反応などに関するダイナミックな観察を行う予定である。さらに得られた成果を基に、種々の系への展開を図り、本手法の有用性を実証して行きたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度研究費は、新規な電解セルなどの計測系の最適化のための構成部材、および実験に必要な試薬類や基板類などの消耗品、またラマン分光測定器使用料(学内共通機器を使用しているため、時間当たりの使用料が発生する)などに使用する予定である。なお今年度予算は全て年度内に使用しており、翌年度に使用する分はない。
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Research Products
(10 results)