2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23656480
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宮原 広郁 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90264069)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成田 一人 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50404017)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 結晶成長 / グラファイト / 過冷度 / 優先成長 |
Research Abstract |
グラファイトは比較的安価にもかかわらず,軽量,高硬度,高ヤング率,高熱伝導特性,高電気伝導特性等の特徴を有することからその利用価値は極めて大きい.しかし,安価なグラファイトは多くの不純物を含むだけでなく,結晶化率が低いとカーボン本来の結合力を発揮できず,機械的性質及び機能性が低下する.そこで,本研究では溶融状態からグラファイトを晶出させ,高速度でかつ安価に生産できるプロセスの構築を試みた. まず,母材として約1kgの純Fe金属及びグラファイトの原料として数十gの低純度炭素を用い,アルミナ系ルツボに充填した後,Ar雰囲気の高周波溶解炉において溶融させ,冷却させることによりグラファイトを晶出させた.冷却により,溶融Fe表面にグラファイト結晶が晶出したが,このとき,グラファイトの晶出量はFe-C平衡状態図と保持温度から推定できた.すなわち高温領域と低温領域における過熱度の差をC溶質による過飽和度の差として変換した量で予測できることが明らかとなった.続いて,Fe-Si系合金と球状化剤を用いてグラファイト形状のオニオンタイプへの変化を試みた.Mg系合金の添加により溶融Fe内の黒鉛は小型の球状グラファイトへ変化した.しかしながらその変化量は添加量のおよそ30%程度であった.さらにグラファイトの大きさは1mm以下であり,浮上せず溶融Fe内に留まった.このことより高速で球状型のグラファイトを形成するためには,半径方向の成長速度を増加させる必要があることが明らかとなった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りに順調に片状のグラファイトを得ることができている。溶融からのメルトグロースを用いた本手法は気相法と比較して極めて高速でグラファイトを得ることができている。その晶出及び回収量は平衡状態図と保持温度から予測できることが明らかとなり,また得られるグラファイトの結晶性も高いと考えられる. 片状のグラファイトと比較して,球状,オニオン状のグラファイト生成については,生成するものの十分な大きさを得ているとは言い難い.しかしながら,グラファイトの保持温度,保持時間,高温部-低温部間の温度差,冷却条件,回収温度等,改善すべきパラメータは抽出しているので,今後,粗大な球状,オニオン状のグラファイトを高速で生成・回収できる条件を最適化する.以上のことより,当初の計画通り,おおむね順調に研究が進んでいると考えられる.
|
Strategy for Future Research Activity |
溶融金属を用いたグラファイトの生成プロセスはその生成量が多く,生産プロセスを容易にできることから,安価で新たなグラファイト製造法として成り立つものと考えられる.晶出量の増加のために,当初の予定通り装置を改良してグラファイトの回収率を増加させる.一方,合金元素の添加で形状を球状のオニオンタイプへ変化できたが,より高速で球状型のグラファイトを形成するためには,半径方向の成長速度を増加させる必要がある.結晶性及び組織を十分解析した上で成長速度の向上を図る指針を得る.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
グラファイトの回収効率を上げるための改良を行うが,このときルツボにはセラミックス製を,また溶媒としてFe合金を用いる.平成23年度に購入した非接触型温度測定器とともに温度確認のための熱電対も必要としている. 得られるグラファイトの観察及び解析として透過型電子顕微鏡(TEM),X 線回折装置及び微小部結晶方位解析装置(EBSP)を用いるがこれらの使用料も必要である.グラファイト生成・回収プロセスの最適化条件を結晶成長学的知見から解析し,得られる成果は国内外の結晶成長に関連する学会への発表と雑誌への報告を予定しており,研究費の一部は投稿料にも充てる計画である。
|