2011 Fiscal Year Research-status Report
界面活性剤によるセルロースのナノ・ミクロ構造の改変と糖化酵素の拡散・吸着の促進
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23656486
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
迫田 章義 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (30170658)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 酵素糖化 / 界面活性剤 / 前処理 |
Research Abstract |
リグノセルロースからのエタノール等のバイオ燃料やポリ乳酸等のバイオマテリアルを発酵によって生産することは、今後ますます重要度を増すと考えられる。この場合、セルロースの酵素糖化およびそのための前処理が鍵となる要素技術であり、これまでに種々の前処法が研究開発されているが、いずれも大量の酸・アルカリ等の薬剤や高温・高圧等の過酷な操作を必要とし、実用化技術が確立されている状況には至っていない。そこで本研究では、界面活性剤をセルロースミクロフィブリル等に吸着させることにより、そのナノ・ミクロ構造を変化させて糖化酵素(セルラーゼ)のセルロースへの拡散・吸着を促進させ、従来法に比べて著しく速度も転化率も高い糖化反応を行い、中和等の処理をすることなく発酵まで行う一連のプロセスを提案し開発することを最終的な目的とする。平成23年度は、界面活性剤によるセルロースのナノ・ミクロ構造の変化とセルロースへの糖化酵素の浸透・拡散促進メカニズム等の基礎的現象やメカニズムを解明することを目的とした。リグノセルロースの界面活性剤(Tween20)処理前後の構造変化を調べるため、SEM観察、細孔径分布測定を行なったところ、Tween20は細胞壁の構造を破壊し、その結果、10-50nm程度の直径を有する細孔が大幅に増加することがわかった。また、これにより糖化酵素の吸着量・吸着速度が著しく増大し、糖化速度も著しく向上した。界面活性剤の利用による糖化反応の促進は多くの研究例が見られるが、それらはいずれも界面活性剤を糖化酵素のリグニンへの非特異的吸着を抑制(ブロッキング)するために用いており、セルロースのナノ・ミクロ構造の変化に着目した研究例は見られない。この新たな表面活性剤の役割と機能機構に基づいた画期的なセルロースの前処理プロセスを開発できる可能性があることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
界面活性剤処理によるリグノセルロースの構造変化や糖化反応の著しい促進をラボスケールの実験によって確認することができた。また、その現象的傾向を把握することができた。さらに、次年度に計画している前処理プロセスの開発について、方針を決めるだけの十分なデータを取得できた。以上をもっておおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
界面活性剤による前処理プロセス、酵素糖化プロセス、発酵プロセスからなるエタノール製造プロセスを設計、開発する。また、小型実験装置を製作し、効果の実証を行う。最終的には実用化の可能性と実用化までの問題点を整理する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前処理プロセス、酵素糖化プロセス、発行プロセスを含めた一連のエタノール製造プロセスを製作するための物品費を主に計上している。また、研究成果を学会にて発表するための旅費を計上している。
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Research Products
(2 results)