2012 Fiscal Year Research-status Report
界面活性剤によるセルロースのナノ・ミクロ構造の改変と糖化酵素の拡散・吸着の促進
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23656486
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
迫田 章義 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (30170658)
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Keywords | surfactant treatment |
Research Abstract |
本研究では、界面活性剤をセルロースミクロフィブリル等に吸着させることにより、そのナノ・ミクロ構造を変化させて糖化酵素(セルラーゼ)のセルロースへの拡散・吸着を促進させ、従来法に比べて著しく速度も転化率も高い糖化反応を行い、中和等の処理をすることなく発酵まで行う一連のプロセスを提案し開発することを最終的な目的とする。昨年度は、界面活性剤処理におけるセルロースの構造改変の基礎的現象やメカニズムを明らかにするとともに、界面活性剤処理を効果的に機能させるためには植物バイオマスのリグニンを一部除去する必要があることを明らかにした。そこで今年度は植物バイオマスからリグニンを一部除去するために白色不朽菌を用いた処理を提案し、界面活性剤処理との複合処理を検討した。稲わらを処理対象バイオマスとして選定し、これを培地として白色不朽菌を30日間培養した。この結果、白色不朽菌処理によりセルロースを殆ど分解することなく、リグニンを30%程度分解除去できることを確認した。そこで次に、白色不朽菌で処理した稲わらに対して界面活性剤(tween20)処理を施し、糖化の促進効果を評価した。しかしながら、界面活性剤処理の糖化促進に対する効果は殆ど見られなかった。これは、稲わらは10%ものシリカを含有しているといった特徴があり、表皮近傍に強固な固体シリカ壁を有しており、稲わらの場合はシリカ壁除去も糖化の促(糖化酵素のアクセシビリティーの改善)に必要であるためと推察された。実際にシリカとリグニンをある程度除去した稲わらに対しては大きく糖化が促進されることを確認している。界面活性剤処理を有効に機能させるためには、植物に応じて組み合わせる前処理を変化させる必要があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、バイオマスの前処理から糖化・発酵までの一連のプロセスの設計と有効性の評価を行い、実験室レベルの装置からのスケールアップを行うことまでを計画していた。界面活性剤によってバイオマス中のセルロースのナノ・ミクロ構造を改変し、糖化・発酵を著しく促進するためには、事前にバイオマスから一部のリグニン成分を取り除いてやる必要があるが、そのような処理として白色不朽菌による前処理を考案し、処理対象バイオマスとして稲わらを選定して、その導入の可能性を検討していた。しかしながら、稲わらの場合、白色不朽菌の処理では界面活性剤の効果があらわれる程度までリグニンを取り除けないことがわかった。また、稲わらはシリカを多く含有しているといった特徴があり、表皮近傍に強固なシリカ壁を有している。このため稲わらの場合はシリカ壁除去も糖化の促進に必要不可欠であると予測される。そこで、現在、対象バイオマスや組み合わせる処理を選定しなおして実験をやりなおしており、この部分で研究の遅延が生じてしまっているため
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Strategy for Future Research Activity |
界面活性剤処理と他の処理を組み合わせた複合処理を検討する。組み合わせる処理や用いる植物バイオマスを複数検討し、有効な組み合わせを探し出した後、一連のプロセスの設計と有効性の評価を行い、実験室レベルの装置からのスケールアップを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の研究の推進方策で述べた事項を行うために消耗品類が必要となり、薬品一式に120,000円、装置スケールアップのための材料一式に322,597円を当てる。また、学会で研究成果を発表するための旅費が必要となり、50,000円をこれに当てる
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