2013 Fiscal Year Annual Research Report
界面活性剤によるセルロースのナノ・ミクロ構造の改変と糖化酵素の拡散・吸着の促進
Project/Area Number |
23656486
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
迫田 章義 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (30170658)
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Keywords | surfactant treatment |
Research Abstract |
本研究は、界面活性剤をセルロースミクロフィブリル等に吸着させることにより、そのナノ,ミクロ構造を変化させて糖化酵素のセルロースへの拡散,吸着を促進させ、従来法に比べて著しく速度も転化率も高い糖化反応を行い、効率的に発酵収率を向上できる一連のプロセスを提案することを最終的な目的としている。非イオン界面活性剤であるTween 20で様々な構造を持つセルロース系試料を処理してナノ,ミクロ構造の変化を分析した結果、結晶性とリグニン含量が非常に高い試料を除いたものにおいてTween20添加による細胞壁構造の崩壊がみられ、内部に10~50nmの細孔の形成とセルロース還元末端の増加を確認しており、これらの構造変化によりセルロースに対する酵素のアクセシビリティーが著しく向上することを吸着実験で確認した。すなわち、界面活性剤処理で効果的にセルロースの構造を変化させるためには植物バイオマスのリグニンを一定量除去する必要があることがわかった。そこで稲わらを対象バイオマスとし、操作が簡単である白色腐朽菌を用いた固体発酵法による脱リグニン処理を組み合わせた界面活性剤処理の有効性を評価した。しかし、白色腐朽菌処理によって約30%のリグニンは除去されたものの、界面活性剤処理による糖化促進は確認できなかった。これは白色不朽菌を用いた処理では、表面近傍のリグニンしか除去できないうえ、稲わら表皮に多く存在しているシリカ壁が糖化を阻害するためと推察された。そこでリグニンとシリカを同時に除去可能なアルカリ処理と組み合わせた界面活性剤処理の有効性を評価した。その結果、一連の前処理を行うことにより糖化反応は20~30%程度の改善が見られた。このことからアルカリ処理と界面活性剤処理の組み合わせ前処理はリグノセルロースの糖化反応に有効であることがわかった。
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