2011 Fiscal Year Research-status Report
イオン強度で結晶系を制御する連続晶析プロセスの開発
Project/Area Number |
23656488
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河瀬 元明 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60231271)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 晶析 / イオン強度 / シュウ酸カルシウム / 結晶形 / 準安定相 |
Research Abstract |
晶析,反応晶析による微粒子製品の製造は工業的に広く実施されているが,粒子の形状(結晶形態)の予測や粒径分布の制御、多形や擬多形の制御は難しいと言われている。申請者はサブミリ秒の反応時間を制御できる管型反応器を用いた反応晶析プロセスによりサイズの制御は成功しており,本研究では結晶形という質の制御に取り組んでいる。 高イオン強度の条件下において、異電荷イオン同士の反応速度は低下する。また多形や擬多形を持っている系において、高過飽和度の条件では準安定相の析出が優先的に起こる。高過飽和度の原料液に高イオン強度を与えることで反応を遅くし、その結果準安定相の選択率を上げることを目的としている。 擬多形を持つシュウ酸カルシウムを対象に,管型反応器を用いた連続晶析を行い,成長時間と粒子収率ならびに結晶系の関係を検討した。種々の pH ならびにイオン強度で粒子合成をおこなったが,いずれの条件でも,傾向としては,成長時間が短い場合に不安定相であるWeddelliteの割合が高く,成長が進むにつれて安定相であるWhewelliteの割合が増加する傾向が認められた。 粒子発生から相移転までの過程を速度解析により検討した。原料液が混合した瞬間に不安定相であるCaoxite粒子が発生し、発生と同時に全てのCaoxite粒子がWeddelliteへと相転移する。その後、Weddelliteの一部が相転移することによりWeddelliteから成る粒子表面上に微小なWhewelliteの核が発生する。この核発生は混合後約5秒間継続し、それ以降はWhewelliteの核が発生することはなく、Whewelliteの成長のみが起こると考えることにより,実験結果を説明することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シュウ酸カルシウムの結晶形制御において,合成時間と生成物の量と結晶形の関係を調べることにより,結晶成長の進行にともない,結晶形がどのように変化するかを明らかにすることができた。現段階では定性的な理解に留まっているが,粒子発生から相移転までの過程がある程度明らかになった。準安定相であるWeddelliteから安定相であるWhewelliteへの相移転が混合後約5秒間で完了することがわかり,今後の研究において滞留時間の指針とすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
反応速度に原料濃度,pH,反応温度が影響する。現状の実験条件は狭い範囲にとどまっており,今後はより広い条件で検討する。結晶成長の経過についてより詳細に検討するとともに,母液のイオン強度が製品粒子の結晶形に与える影響を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験用消耗品として反応器材料に20万円,粒子サンプリング用メンブレンフィルターに8万円,TEM観察用マイクログリッドに15万円,高純度試薬に30万円,配管部品に20万円,高純度ガスに15万円を計上している。成果報告のための京都-東京出張2泊3日,研究成果投稿料計12万円を計画している。
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