2011 Fiscal Year Research-status Report
レアメタルを使用しない高感度ケミカル紫外線センサーの開発
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23656503
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
平井 隆之 大阪大学, 太陽エネルギー化学研究センター, 教授 (80208800)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白石 康浩 大阪大学, 太陽エネルギー化学研究センター, 准教授 (70343259)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 紫外線センサー / キサンテン色素 / スピロピラン / コバルト錯体 |
Research Abstract |
本研究では、太陽光に含まれる有害な紫外線の光量を、吸収スペクトル測定により正確かつ簡便に計測することのできるケミカル紫外線センサーを開発する。平成23年度は、スピロピラン分子の紫外線吸収による開環反応に基づいた分子設計により、紫外線センサー分子の開発に取り組んだ。特に、以下の項目に対して興味深い結果を得た。1)キサンテン色素であるフルオレセインとスピロピランを複合化した分子が、紫外線(<400nm)だけに選択的に応答して黄色に着色することを見出した。この応答の量子収率は10%以上であり、極めて感度の良い紫外線センサーとなる可能性が示唆された。2)スピロピラン-アミド-ジピコリルアミンからなる連結分子のCo(II)錯体が、紫外線だけに応答して着色する新しい現象を見出した。この紫外線応答はCo(II)錯体におけるアミド酸素とCo(II)の強い相互作用による。Co(II)が存在しない場合には紫外線を照射しても着色は見られない。これは、アミドからの電子供与によりスピロ結合が安定化されスピロピランの光異性化が進行しないためである。ところが、Co(II)錯体の状態では、アミド酸素とCo(II)の相互作用により、アミドの電子供与性が弱まり、スピロ結合が緩和されることにより光異性化が進行するようになる。この応答は熱に対しては全く誘起されず、かつ生成した着色種は熱や可視光を照射した場合にもまったく変化しない。すなわち、紫外線を選択的に定量するための機能を有することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スピロピランの光異性化を鍵反応として、キサンテン分子との複合化、あるいはピコリルアミンリガンドの導入により、紫外線に選択的に応答して発色する新規分子の開発が可能になることを明らかにした。特に後者の方法では、紫外線照射により生成した分子は熱的にも光化学的にも安定であり、紫外線センサーに必要な性質を満たしている。本分子の特性を応用すれば、より感度の高い紫外線センサーの開発が可能になると考えられる。それゆえ、区分(2)に該当すると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
紫外線センサーの紫外線に対する感度と安定性の向上を目的とした検討を進める。前者に対しては、熱や可視光に対して応答せず、かつ紫外線だけに高感度に応答する分子へと改良を行う必要がある。今年度明らかにした金属錯体を用いる方法に基づく様々な方法によりこの課題の解決を図る。また後者の安定性の向上に関しては、ゼオライト等の細孔内部へのセンサー分子の固定化により、二量化等の副反応を抑制することにより取り組む。これらの研究成果を総合して、紫外線に対する高い感度と安定性を有する再使用可能な紫外線センサーを導き出す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に請求した研究費は、当初の予定どおり、実験試薬あるいは反応用光源に用いるキセノンランプの交換費用をはじめとする消耗品、ならびに成果発表のための旅費として用いる。
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Research Products
(12 results)