2011 Fiscal Year Research-status Report
ヘテロ元素で表面修飾した劣質未利用炭素資源を用いる新規コークス製造システムの開発
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23656506
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
坪内 直人 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90333898)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 石炭 / 乾留 / 軟化溶融 / アンモニア / シアン化水素 / 硫化水素 / ヘテロ化合物 / コークス |
Research Abstract |
本課題研究では、製鉄産業に係わる資源動向を鑑み、コークス製造用原料炭(粘結炭)の使用量を最小化する技術の開発を主な目的とする。特に、窒素と硫黄を多く有する石炭は高い軟化溶融性能を示すという最新の報告に従い、ヘテロ元素で表面修飾した劣質未利用炭素資源を用いるコークス製造システムの開発に取り組む。 本年度は先ず、石炭中の窒素と硫黄の存在状態と乾留時における化学形態変化を調べる一方、軟化溶融性能に及ぼす含窒素・含硫黄化合物の添加効果を検討した結果、石炭中の窒素は主にピロール型やピリジン型といった複素環構造から成り、両者の窒素種の合計は75~90mol%に上ることが明らかとなった。また、硫黄の主な形態はチオフェン型で、その割合は75~90mol%の範囲にあり、次いでスルホン・スルホキシドが多く存在した。石炭の低速加熱熱分解では、HCNとNH3は主に380~500℃の範囲で発生し、一方、H2Sは主に250℃付近から発生し始め、450℃前後と550℃付近に鋭いピークもしくはショルダーを与えた。興味深いことに、450℃までに発生するHCN、NH3、H2Sの量と最高流動度の間には見かけ上良好な相関関係が存在することが判明した。更に、石炭に少量の含窒素・含硫黄化合物を添加すると、多くの場合、流動性が低下したが、ペリレンやアザペリレンを加えると最高流動度は大幅に増加し、その効果は加える窒素と硫黄の化学形態に著しく依存することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ヘテロ元素で表面を修飾した劣質未利用炭素資源を用いる新規コークス製造システムの開発に重要な「石炭中の窒素と硫黄の存在状態と乾留過程での形態変化」及び「加熱過程における両元素の脱離挙動」の解明を目的に掲げたが、これらは「研究実績の概要」に記載したように全て行うことができ、加えて、HCN、NH3、H2Sの各発生量と最高流動度の関係や流動性に及ぼす含窒素・含硫黄化合物の添加の影響も明らかにすることが出来た。従って、現在までの達成度は、当初の計画以上に進んでいると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、ヘテロ元素で表面を修飾した劣質未利用炭素資源を用いるコークス製造法の開発を目指し、NH3やH2S等で表面処理した褐炭や亜瀝青炭を調製し、その軟化溶融性能を調べる。また、褐炭中に含まれる金属イオンからα-FeとCaOのナノ粒子含有炭素複合体を製造し、そのNH3分解性能とH2S吸収性能を決定する主な要因を抽出し、その結果に従い、導入した窒素と硫黄からのNH3とH2Sの同時除去剤の開発指針を確立する。 最終的には、上記で得られた結果を総合して「ヘテロ界面を用いる劣質未利用炭素資源コークス化技術と後段のヘテロ元素の除去から成るシステム」の開発原理を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、収支状況報告書に記載したように繰越金が生じたが、この主な理由は石炭に添加する含窒素・含硫黄化合物を既往の研究に基づき、数種類に絞り込んだためである。この生じた研究資金は、次年度に行う「石炭のNH3ならびにH2S処理」用のボンベの購入に使用し、上述した「ヘテロ元素で表面修飾した劣質未利用炭素資源を用いるコークス製造システムの開発」を目指す。
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Research Products
(9 results)