2011 Fiscal Year Research-status Report
鉄鋼スラグを原料とした固体酸塩基触媒の合成とグリーンケミストリーへの応用
Project/Area Number |
23656511
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山下 弘巳 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40200688)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 酸触媒 / 塩基触媒 / 固体酸塩基触媒 / 鉄鋼スラグ / バイオディーゼル合成 / CO2固定化 / In-situ測定 / ハイドロタルサイト |
Research Abstract |
1)バイオディーゼル合成反応・CO2固定化反応の固体酸塩基触媒としての応用: 鉄鋼スラグを原料として得られた層状複水酸化物が、Knoevenagel縮合反応、酸素を酸化剤としたアルキル芳香族の部分酸化反応、エステル交換反応、植物油からのバイオディーゼル合成反応など、種々の触媒反応に高活性を有し、廃棄物を原料としているにも関わらず有用な多機能性触媒として利用可能であることを明らかにした。特に、触媒合成条件や反応条件の最適化を行うと共に、遊離脂肪酸が多く含まれる廃油などからもバイオディーゼル合成が可能であることを確認した。また、類似のハイドロタルサイト(Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O)は合成条件の最適化と焼成処理を施すことにより、酸塩基両機能性が発現し、CO2とエポキシドからの環状カーボネート合成に活性を示すことが知られている。鉄鋼スラグを原料として合成した層状複水酸化物は、これよりも優れた酸塩基性を有することから、上記のCO2固定化反応などに有用な触媒であることを見出した。 2)XAFS測定による遷移金属種の局所構造解析と反応ダイナミクスの評価: 鉄鋼スラグ中に含まれるFeやMnなどの不純物遷移金属元素の存在により、1) 固体酸塩基性が向上すること、2) 空気中の二酸化炭素による被毒量が極めて軽減され大気中で保存しても高い活性が維持されること、を見出した。放射光XAFSなどを利用し、触媒構造内に含まれるスラグ成分由来遷移金属元素の局所構造を反応物質共存下やCO2雰囲気下でのin-situ状態で測定解析を行い、活性点構造を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
鉄鋼スラグを原料として層状複水酸化物が予想以上に容易に調製でき、安定な構造と触媒作用を示したため、順調に研究を進めることができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)新規合成プロセスの導入による、酸塩基両機能性触媒の創成: 鉄鋼スラグは興味深い特徴ある化学組成を有しており、新規変換プロセスを導入することで、廃棄物からでも有用かつユニークな化学・触媒特性を持った物質を合成できると考えられる。例えば界面活性剤を用いることで、自己組織化を利用したマイクロ・メソ多孔体の創成や高表面積化が図れる。さらに、スラグ中には塩基性元素(Ca, Mg)、酸性元素(Si)、および触媒活性金属元素(Ti, Fe, Mn)が含まれているため、これまでにない新ルートでのケイ酸カルシウム類などの酸塩基両機能性触媒の合成への展開などを行う。 2)金属触媒担体としての利用: スラグから合成されたハイドロタルサイト様化合物は、貴金属触媒の触媒担体としても利用されている。ポストシンセシス的な手法として、合成したハイドロタルサイト様化合物にV, Cu, Pd, Pt, Ru, Auなどの触媒活性金属種をイオン交換的手法もしくはナノ粒子として取り込み、ユニークな反応場を提供する触媒担体としての利用法についても検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験計画に沿った研究経費を以下に示す。今年度の繰越研究費(183,701円)および次年度の研究費(1,700,000円)については、以下の使用を計画している。 1)鉄鋼スラグを原材料とする新規触媒の調製と反応:消耗品の試料調製用試薬(403,701円)、ガラス器具(300,000円)が必要。 2) 構造解析: 種々の分光手法を用い試料の構造解析をするため、比表面積細孔分布測定装置、元素分析、フォトルミネッセンス, TEM, FE-SEM, Raman, XRD, XPS, XAFS、SQUID, Mössbauer などは、既設であるか借用が可能。XAFS測定は高エネ研(つくば)で行うため国内旅費(100,000円)が必要。試料調製と構造解析には、研究代表者研究室所属の大学院生の実験補助(200,000円)が必要。構造解析に計算機使用(200,000円)が必要。 3)成果発表:上記研究の成果発表として外国旅費(触媒国際会議(ミュンヘン)参加渡航費、環境触媒国際会議(リヨン)参加渡航費)(680,000円)を必要。以上より、物品費(薬品、ガラス器具)703,701円、旅費(外国旅費、国内旅費)780,000円、人件費・謝金(実験補助)200,000円、その他(計算機使用)200,000円を使用する。
|
Research Products
(29 results)