2011 Fiscal Year Research-status Report
金属サブナノクラスターの精密な構成原子数制御法の開発
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23656514
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
水垣 共雄 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (50314406)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | サブナノクラスター / デンドリマー / パラジウム / 触媒 / ナノ反応場 |
Research Abstract |
本申請課題では、粒子径1nm以下のサブナノ金属クラスターの精密合成法の開発を目的としている。サブナノクラスターでは、ほぼすべての構成原子が表面に露出しており特異な反応性が期待されるものの、その精密な合成法は未だ確立されていない。本申請研究では、ナノ空孔を有するカプセル状高分子であるデンドリマーを用い、主にパラジウムを用いて、1nm以下のサブナノスケールで構成原子数を精密に制御した金属クラスター合成法と触媒機能の開発を行っている。本年度は、デンドリマー内部に取り込むPd(II)イオン数や還元条件を制御することで、1nm付近のPdクラスターの選択的合成を行った。Pd(II)イオンの取込み方法は、Pd水溶液とデンドリマー溶液との攪拌、抽出法を適用し、還元剤の量、反応温度を制御することで、より精密なクラスター調製を行った。調製したデンドリマー内包Pdクラスターのサイズ確認をTEMにより行っている。従来のナノ粒子と異なりサブナノサイズの金属クラスターでは、TEMでの確認が非常に困難である。そこで、デンドリマー内包Pdクラスターをカーボン薄膜状に固定化し、より鮮明に調製したクラスターのサイズを確認する手法の開発を行っている。近年、電子顕微鏡技術は大きく向上しているが、その能力を最大限発揮するためには、観察試料の調製法は極めて重要である。これまでに我々が行ってきたXAFS法による平均値としてのサイズ確認と電子顕微鏡による個々の粒子の直接観察により、本課題の目的であるサブナノ領域でのサイズ制御をより明確にすることができると考えられる。また、触媒反応性の面からは、調製したサブナノPdクラスターを用いたアリル位置換反応を行い、クラスターの構成原子数に依存した反応性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定をしていたサブナノPdクラスターのサイズ制御法として、現在、そのキャラクタリゼーション法については、電子顕微鏡やXAFS法を用いた有意な結果が得られている。これまでの触媒反応性の検討結果との整合性が取れており、おおむね予定通りの進捗状況と判断している。これらの結果をもとに、下記に示す、本年度の計画に沿って他の金属種についても検討を行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年値どから継続して、Pdクラスターの構造解析法を確立し、前年度に探索したサブナノPdクラスター調製法を拡張し、Pd以外のサブナノ金属クラスターの調製へと展開する。対象とする元素は、周期表の8から10属の遷移金属を中心とし、特に新しい触媒活性が期待されるAgをはじめ、Cu, Ru, Auなどのサブナノクラスター化について検討する。サブナノ金属クラスターでは、水素化反応以外に、酸化反応、炭素-炭素結合形成反応における触媒特性の検討を行う。これらの金属元素についても、クラスター生成の確認は、高輝度放射光を用いたXAFS測定とTEM観察を行う。さらに、順調な成果が得られれば、合金系サブナノクラスターの調製へと展開する。 本研究に必要な主要設備として、粒子径および粒子径分布の測定には、X線吸収微細構造(XAFS)、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、およびX線回折装置、また、表面酸化状態の測定にはX線光電子分光装置(XPS)を用いるが、これらは現有設備もしくは借用で対応できる。特に、XAFSについては高輝度放射光施設(SPring-8、PF)の利用、電子顕微鏡観察は、大阪大学高圧電子顕微鏡センターの装置を利用する。また、合成したデンドリマーの構造解析、金属含有量の定量などは、学内共通設備であるNMR、ICP発光分析、質量分析装置を用いる。また、ガスクロマトグラフ、液体クロマトグラフは現有設備が利用できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者(水垣)は、研究計画の立案と総括、およびサブナノクラスター調製と触媒特性の解明を行う。消耗品は主にサブナノ金属クラスターの調製と触媒反応用試薬類である。また分析用ガスが必要となる。また、XAFS実験に関して、放射光施設の使用料が必要となる。また、計上した旅費は国内外の学会参加であり、本年度は、Nanotech2012への参加(米国California)を予定している。
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Research Products
(11 results)