2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23656518
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 哲志 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80398106)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 蛍光標識 / 酵素 / ペプチド / トリプトファンジッパー / ペプチド連結酵素 / 細胞 |
Research Abstract |
細胞内蛋白質の蛍光標識技術は、細胞内での蛋白質の動態や相互作用を可視化する技術として期待されている。しかし、細胞内には多種の蛋白質が高濃度に共存しており、対象蛋白質の特異的な標識は極めて困難である。また、未反応のラベル化剤の除去も難しく、標識してもバックグランド蛍光が高すぎて可視化できないという問題もある。そこで、本研究では、酵素を用いて特異的に標識が可能であり、また、標識されて初めて蛍光を発するようなタグ配列-蛍光ラベル化剤ペアの開発を目的とした研究を行った。ペプチド連結酵素Sortase Aの基質配列とトリプトファンジッパー配列とを組み合わせた数10種類のラベル化剤-タグペアを合成し、その連結前後での蛍光変化を詳細に調べた。その結果、Sortase Aによる連結反応後に、最大で2.6倍に蛍光が増大するペアを見出した。その連結後のペプチドの構造を円偏光二色性スペクトル測定によって評価したところ、反応後に設計通りにトリプトファンジッパー構造を形成していること、また、連結反応前に確認された蛍光色素由来のコットンピークが連結後に消失していることから、連結によって色素とペプチドとの相互作用が緩和されたことが強く示唆された。これらの結果より、連結前のラベル化剤では、蛍光色素とペプチド部分のトリプトファン側鎖とが相互作用することによって蛍光が消光され、連結後にタグ配列上のトリプトファン側鎖とラベル化剤のトリプトファン側鎖とがトリプトファンジッパー構造を競合的に形成することによって色素との相互作用が緩和されて蛍光が回復するというメカニズムが想定される。今回開発したタグ配列-蛍光ラベル化剤ペアを用いて、次年度はタグ配列を有する蛋白質の標識をin vitroおよびin vivoで実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画においては、平成23年度に、酵素反応後に蛍光強度が増強するタグ配列-蛍光ラベル化剤ペアの最適化を実施すること、また、細胞内でのsortase Aによるペプチド連結反応の検討を実施することを計画していた。前者に関しては、未だ増加率は低いが、連結反応によって蛍光強度が増加するタグ配列-蛍光ラベル化剤ペアを見出すことが出来た。後者に関しては、ポリアルギニン配列を修飾したsortase Aの細胞内導入は確認できているが、エンドソームに捕捉されてしまい細胞質にsortase Aを効率よく導入する方法が確立していないのが現状である。また、sortase Aが連結する二つの基質ペプチドを同じ分子のN末端とC末端とに導入したモデル蛋白質を用いた場合については、細胞外から導入したsortase Aを用いて連結反応が進行し、分子内環化させられることは示されているが、二つの分子を連結することには成功していない。これは、sortase Aの基質との結合が弱いことが原因と考えられ、細胞質内へと効率よくsortase Aを導入する方法論が必要である。以上の理由から、研究計画に比べて、到達度はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、細胞内でsortase A反応を行うために、sortase Aを細胞外から効率良く細胞質内に導入する技術の開発に力を注ぐ。現在、光誘導型ラジカル発生試薬を用いたエンドソームからの蛋白質放出技術、また、ピレンブチレートを用いた細胞質内への蛋白質導入技術、市販の蛋白質導入剤を用いた技術を精力的に試している。今後もこの検討を継続して行い、細胞内で二分子の連結が可能な効率良い導入法を模索する。また、sortase Aに可逆的な相互作用を用いてラベル化剤を担持させて反応点の局所濃度を高めるなど、細胞質内での連結反応を推進するための工夫も検討したい。 次に、細胞内で標識するターゲットとしては、当初の研究計画では細胞質内にC末端が出ているCD9をモデルターゲット蛋白質と考えていたが、試した幾つかの細胞において大量発現に伴う毒性が観察されたため、より簡便に発現できる緑色蛍光蛋白質(GFP)を用いて検討を行う。核や細胞膜などへの移行シグナルをつけたGFPをモデルとして、細胞内での標識実験を検討する予定である。最後に、標識法が確立したら、当初の計画通り、副甲状腺ホルモン受容体(PTHR)の標識を行い、PTHRと-アレスチンとの細胞内相互作用を検出する系の構築を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
細胞内での標識実験を実施するため、動物細胞実験およびその解析に必要な消耗品を購入する。蛋白質の細胞内導入試薬の合成材料および市販の導入試薬も購入する。また、前年度の成果を発表し、細胞内蛋白質標識についての情報を収集するため、国内学会への参加旅費も計上したい。
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Research Products
(2 results)