2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23656524
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川本 卓男 京都大学, 放射性同位元素総合センター, 教授 (10231276)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ES細胞 / 多能性幹細胞 / iPS細胞 / 初期化 |
Research Abstract |
世界中の研究者が安全で効率のよい人工多能性幹細胞の誘導法を開発しようとしのぎを削っているが、そのほとんどが、体細胞に導入する遺伝子の種類や数、その導入法の改良、あるいは化学物質の利用といった観点からの研究である。本研究では、それらとは違った観点から、ES細胞の持つ初期化能を利用して体細胞核由来の多能性幹細胞を作製する新規で安全な方法を検討した。 まずは、ES細胞を脱核し得られる細胞質体を、体細胞と融合させることで、体細胞由来の核を初期化できれば、体細胞核由来の多能性幹細胞の作製ができると考え、体細胞やES細胞を効率よく脱核し、細胞質体および核体を得る方法の検討を行った。この方法で、体細胞核由来の多能性幹細胞の作製することができれば、すでに樹立したES細胞を用いるだけで、新たにES細胞を樹立する必要もないので、倫理的な問題が少なく、さらに、体細胞の遺伝子に手を加えることもなく、細胞の初期化に関係するような危険な化学薬品も使用しないため現在のiPS細胞の持つ危険性を大きく低減できると考えられる。 培養皿に接着した細胞は、サイトカラシンを加え、培養することによって、核を浮き上がらせてきて、核と分離できるとの報告があったので、まず、細胞株としてHEK細胞株を用いて、様々な濃度で、サイトカラシンを加えて検討してみた。細胞の様子は、トリパンブルー染色を用いて行い、生細胞数の計測も行った。その結果、1μg/mlといった低濃度のサイトカラシンでも、細胞自身がダメージを受けてしまうことが分かった。次に細胞株を変え、PA6細胞株なども試みたが、うまくいかなかった。そこで、Ficollを用いた密度勾配遠心法を併用した脱核及び細胞質体や核体の単離を試みたところ、細胞質成分は低濃度の画分、核は底の画分に含まれていることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サイトカラシンとFicollを用いた密度勾配遠心法を併用した脱核及び細胞質体や核体の単離を試みたところ、細胞質成分は低濃度の画分、核は一番底の画分に含まれていることが分かったので、この方法をさらに検討することによって効率の良い脱核法や細胞質体、核体の単離法の確立を図れる。
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Strategy for Future Research Activity |
サイトカラシンとFicollを用いた密度勾配遠心法を併用した脱核法及び細胞質体や核体の単離法における、諸条件の最適化を図る。さらに、細胞質体と細胞との融合法の検討も進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初に購入し使用を予定していた電気的刺激によって細胞を融合する細胞装置は、比較的高額で、申請額より交付額が減額されたため、これを購入使用すると使用できる研究費を圧迫する可能性が高く、他の方法や装置の検討が必要となった。この検討等に必要な装置や消耗品の購入等に用いる予定である。さらに、脱核法及び細胞質体や核体の単離法の検討のために必要な消耗品等の購入にも用いる予定である。
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