2011 Fiscal Year Research-status Report
新規スクリーニングシステムによるアミロイド毒性変換技術の開発
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23656525
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
島内 寿徳 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (10335383)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | メンブレン・ストレスバイオテクノロジー / メンブレノーム / アミロイド / LIPOzyme / 細胞毒性 |
Research Abstract |
アミロイドは生体膜上で増殖し,細胞毒性を誘導する.しかし,生体膜上で形成したアミロイドの増殖・毒性発現を防ぐ手段はない.本研究では,リポソームによるアミロイドの毒性変換技術(低毒性化・無毒化)の開発にチャレンジする.そこで,平成23年度では,単純にアミロイドの毒性変換を狙う.平成24年度では,アミロイド毒性ならびに周辺環境の改善も狙う予定である.本年度では,以下の3項目に分けて検討を進め,所定の成果を得た.ただし,4点目は次年度検討予定の項目であるが,本年度に着手し,一定の成果を得る事が出来た.1. リポソームによるアミロイドの毒性変換の基礎検討.当グループが公表しているメンブレンライブラリー(50種類)から選抜した中性脂質とアルデヒド型脂質誘導体からなるリポソームが,毒性変換に適したリポソームである事を見出した.2. LIPOzyme開発 ~ペプチド断片の探索・機能評価~ α-キモトリプシンの自己消化により得られるペプチド断片をリポソームに提示して得られるLIPOzymeの加水分解活性を検討した結果,nativeなα-キモトリプシンに及ばないものの,アミロイドの分解活性を示す事が分かった.3. 選抜されたペプチド断片の細胞毒性の検討.上記のα-キモトリプシンならびにLIPOzmeや,得られたアミロイド断片は低毒性である事が分かった.4. アミロイド形成阻害能(平成24年度での検討項目)を有するリポソーム/銅イオン複合体を調製し,アミロイドや老人斑の形成を阻害する事に成功した. 以上より,ライブラリーからアミロイドの毒性変換が可能な新規な脂質組成のリポソームを選抜できた.現時点では,プロテアーゼ分解活性を提示したLIPOzymeの調製に成功し,それが低毒性であり,かつ,アミロイドを部分的に断片化できる事が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は3項目に分けて研究を推進し,それぞれの項目で以下のような実証例を得る事ができた.一部は次年度検討予定のものも検討を進める事ができた.1. 公表済みのメンブレンライブラリーから,アミロイドの毒性低減化に有効な脂質組成の候補を提示し,実際に低毒性である事を実証できた.これは「新規スクリーニング法」の有効性も同時に実証した事になると考えられる.2. アミロイドを断片化する加水分解酵素を探索し,そのペプチド断片を取得できた.さらに,リポソーム膜上に提示して,LIPOzyme活性を得る事を実証した.3. 今回調製したLIPOzymeや断片化されたアミロイドが比較的低毒性である事を実証した.4. アミロイド形成阻害能(平成24年度での検討項目)を有するリポソーム/銅イオン複合体を調製し,アミロイド形成の阻害や老人斑の誘導を阻害する事に成功した. 以上より,本年度の目標であった「単純にアミロイドの毒性変換を狙う」という目標を達成できたと考えられる.分子論的な詳細な検討は不純分ではあるものの,リポソームを用いたアミロイドの毒性変換(低毒性化・無毒化)を狙うという研究戦略が実証可能なレベルである事を示すことができた.それゆえ,本年度の研究はおおむね順調に進展していると考える次第である.
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度において,詳細な分子論的機構の検討は不十分であった.顕微ラマン分光法や高周波誘電分散解析法などを駆使する事で,上記の不十分な点に関する検討を進める.その上で,平成24年度は,アミロイド形成阻害能,Aβ分解活性,酸化ストレス低減を可能にする多機能性LIPOxymeの開発に向けて,以下の項目に分けて検討を進める.1. アミロイド形成阻害能・・・アミロイド形成の関連分子種とリポソームとの相互作用を評価し,鍵分子種を安定化させ,アミロイド形成阻害を目指す.その候補として,リポソーム/銅イオン複合体を用い,脂質組成やリガンドの最適化を目指す.2. Aβ分解活性・・・リポソームに提示されたペプチド断片の物性解析を進め,分解メカニズムを明らかにする.3. 酸化ストレス低減を指向し,可能であれば,電子伝達系を提示したリポソームの機能評価とアミロイドとの相互作用の検討を進めたい.以上を総括し,多機能性LIPOzymeを開発し,最終的にはアミロイドの毒性変換と周辺環境の改善が可能であるかどうかを検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の検討項目に必要な以下の経費を見込んでいる.1. アミロイドβや脂質の購入,2. メンブレンチップ作成費用(電極材料やリポソーム固定化用の化学試薬全般),3. 脂質酸化体の検討のため,蒸発型光散乱型検出器による分析の依頼費用.4. 細胞毒性評価のための細胞株,細胞培養,などの種々の経費,5. アミロイド断片やLIPOzyme用のペプチド断片の物性評価のため,TOF-MASや走査型TEMの測定依頼.どの程度の分子量に断片化されれば毒性が低減されるかを定量化するには必須な検討であるため,複数回の依頼を考えている.6. 得られた研究成果を国内外の複数の学会にて発表する予定であり,そのための旅費を計上している.
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Research Products
(10 results)