2011 Fiscal Year Research-status Report
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23656548
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
和田 大志 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60359700)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 船舶海洋工学 / 材料・構造力学 / インテリジェント構造 / 機能性材料 / 総合工学 |
Research Abstract |
航空機では高コストの材料を採用できるため機能性材料を用いたインテリジェント構造(知能構造)の研究が米国NASAなどで活発に行われている。同じハコモノである船舶においても、コスト低減により、センサーが状況を感知しアクチュエータが材料構造特性を能動的に変化させるインテリジェント構造が将来的に発展すると考えられる。そこで、多くの種類が存在する機能性材料のうちで、性能や機能は十分に高いがコストも低い形状記憶合金、圧電素子、熱電素子、光ファイバー、誘電エラストマーに注目し、船舶構造のインテリジェント化(知能化)のさきがけ的な研究を行った。本研究においては、(1)構造健全性モニタリング(ヘルスモニタリング)、(2)排熱の電気エネルギー化、(3)振動の能動制御と回生エネルギー技術、(4)構造変形(=モーフィング)の4テーマに着手した。これらは航空機や自動車における構造のインテリジェント化技術として研究されつつあるが、船舶においても魅力的なインテリジェント構造であり、低コストであることからも、実現可能性が高い。本年度は、(1)「FRPヘルスモニタリング」船舶構造としてFRPと発泡材の間に光ファイバーを挟み構造モニタリングを行い、さらにバッテリー内蔵の小型ICパッチを貼り付け、損傷状況を無線送信し、コンピュータで常時、損傷の監視を行うための知的構造を実現するために、まずICパッチ無線技術を確立した。また、(2)「エンジン排熱の電気エネルギー化」スターリングエンジンと誘電エラストマーを用いた温度差発電のデモ機の設計を行った。(3)「振動の電気エネルギー化」流体中の物体後方のカルマン渦列による振動により発電できるデモ機を作製した。(4)「形状記憶合金網」TiNiワイヤーを編むことにより、非常に大きなひずみを出力できることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の4つのテーマ、(1)構造健全性モニタリング(ヘルスモニタリング)、(2)排熱の電気エネルギー化、(3)振動の能動制御と回生エネルギー技術、(4)構造変形(=モーフィング)の各々について述べる。(1)においては、ひずみ検知IC無線パッチの設計製作は2年がかりの予定であったが、最初の1年目においてほぼ完成できた。このひずみ検知ICパッチは、従来のひずみゲージを用いて、その精度が十分であることも確認できた。5つ以上のひずみ検知IC無線パッチからの情報を遠隔的にPCに取り組むことができた。当初の計画以上に進展しているといえる。(2)においては、当初は、熱電素子を使用する予定であったが、これまでにない新しい組み合わせである「スターリングエンジン+誘電エラストマー」方式によって発電する方式の方が効率が高くなる可能性を見出したので、発電方式を変更した。現在、スターリングエンジンの設計と誘電エラストマーダイアフラム型小型発電機の設計製作が終了したところであり、当初の予定よりも進展していると思われる。(3)については、当初は、しばしば多くの研究者が発想する圧電素子による振動発電を考えていたが、発電素子よりもさらに効率的に流体エネルギーを電気エネルギーに変換できる誘電エラストマー発電方式に切り替え、すでに発電に成功した。当初の計画より遥かに進展しているといえる。(4)については、TiNi形状記憶合金のバルク材を当初考えていたが、さらなる熟慮により、TiNi形状記憶合金ワイヤー網目型アクチュエータの発想に至った。ワイヤーならば市販されているうえ、網目状にすることにより軽量化でき安価になるうえ、加熱冷却がさらに容易になり、その動作スピードは遥かに速くなり、非常に高性能なアクチュエータを作り出すことができた。これについては、当初の計画をはるかに上回る成果を得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の4つのテーマ、(1)構造健全性モニタリング(ヘルスモニタリング)、(2)排熱の電気エネルギー化、(3)振動の能動制御と回生エネルギー技術、(4)構造変形(=モーフィング)の各々について述べる。(1)においては、船体構造を模した疲労試験体に実際にひずみ検知IC無線パッチを貼り付け、疲労実験を行い、疲労亀裂の発生の検出を試み、検知IC無線パッチがヘルスモニタリング技術として使い得ることを示す。また、バッテリーが長年は持たないことを考慮して、(3)の振動発電技術を用いて、充電式バッテリーを用いて、永久的にひずみ検知IC無線パッチが使用可能となるよう、研究を進める。(2)においては、設計した超小型スターリングエンジンを作製し、誘電エラストマーダイアフラム発電機と組み合わせて、温度差発電ができることを示す。また、その発電効率や、発電量についても、実験を行い、定量的データを得るものとする。(3)においては、すでに90%完成したといえるが、主として実験により、さらなる発電効率の追求を行う。また、水流れだけでなく空気流れにおいても同様の効果が得られることも視野に入れ研究を推進することとする。(4)においては、網目状の編み方の工夫をさらに加えて、さらなる大出力(荷重とストローク)を目指す。これは、ワイヤーという1次元物体を用いて、2次元あるいは3次元物体を作り出すことを意味するので、幾何学の一種であり、実用的価値のみならずアカデミックな価値も非常に高いので、実用化と新しい幾何学の追求の両者を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使用計画は、当初の交付申請書通りに行う予定である。出張費に関しては、初年度の研究成果を国際会議で数件発表するためのものとして、主に、用いる計画である。物品費に関しては、誘電エラストマー購入や市販のTiNiワイヤーの購入など、主として原材料費にあてる予定である。
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