2011 Fiscal Year Research-status Report
硫黄の水熱反応における水素生成機構の解明と地熱を利用した持続的水素製造への応用
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23656556
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡邉 則昭 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (60466539)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 硫黄 / 水熱反応 / 水素 / 地熱 |
Research Abstract |
HS-やS2-(これ以降、まとめてS2-)を含有する水溶液を250℃~320℃、飽和蒸気圧下で処理すると、S2-濃度が減少し水素が生成する。また反応後の溶液に還元性を有するグルコースを加えて30℃~80℃で処理するとS2-濃度が上昇することから、S2-が水に対して還元剤としてはたらき水素が生成、S2-は酸化されて多硫化物イオンや硫黄のオキソ酸イオンに変化するという水素生成機構が示唆されていた。この超低温の熱化学的水素生成機構は学術的に興味深いだけでなく、上記のような特徴から、余剰硫黄やバイオマス廃棄物を原料とし、地熱や廃熱等の低品位の熱を利用した、持続的水素製造プロセスへ応用できる可能性がある。 そこで本研究では今年度、これまで問題となっていた水素生成実験における昇温・降温時の余分な反応を抑えるため、急速昇温・冷却機能を有する反応容器を新たに開発し、水素生成メカニズムの解明を試みた。具体的には、S2-を含有する水溶液からの水素生成実験を、広範なpH・温度条件(pH 9~13、230~320 ℃)で実施した。その結果、これまでの理論通りS2-と水が反応し、多硫化物イオンや硫黄のオキソ酸イオンが生じる際に水素が生成することを確認した。すなわち、S2-を1モル消費した場合、H2が0.5~4モルの範囲で生じた。またこの理論に基づけば、水素生成量の温度およびpH依存性は以下のように説明できる。すなわち、水素生成量は温度上昇にともない指数関数的に増加するが、これは(1)高温ほど反応速度が大きくなることに加えて、(2)より硫黄の酸化が進行するようになるという、二つの機構がはたらくことによるものである。一方、pHの増加に対して、水素生成量は指数関数的ではないもののやはり増加するが、これは上記(2)の機構のみがはたらくためである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度および次年度前半の主目的は、水素生成機構の解明(水素生成が可能な硫黄化学種の特定、pH・温度の影響把握、反応式および反応速度式の導出)であったが、反応速度式の導出以外(半分以上)すでに完了している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題はおおむね順調に進展しているため、今後も当初の計画通り本研究課題を推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことにともない発生した未使用額であり、平成24年度請求額とあわせ、次年度に計画いている研究の遂行に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)