2011 Fiscal Year Research-status Report
ヘキサクロロベンゼンを完全に脱塩素する微生物コンソーシアムの解析
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23656559
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井上 千弘 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (30271878)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須藤 孝一 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (90291252)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 水質汚濁・土壌汚染防止・浄化 / 有害化学物質 / 生態学 / 微生物コンソーシアム / ヘキサクロロベンゼン / 脱塩素 / 速度解析 / 遺伝子解析 |
Research Abstract |
本研究では、地球規模で汚染が広がりその対策が急務である残留性有機汚染物質(POPs)の代表として、構造がシンプルなヘキサクロロベンゼン(HCB)を取り上げ、その微生物分解の過程を反応速度論と分子生物学の2つの側面から詳細に検討する。また、他のPOPs類への適用性についても検討を行い、実験室レベルにおいて微生物によるPOPs類の完全無害化をその反応経路や反応生成物、あるいは分解微生物とその群集構造を含めて詳細に提示することを目的とする。 本年度の研究概要は次のとおりである。研究室で保有しているTCE脱塩素能力を有する微生物コンソーシアムを含む培地にHCBをスパイクして集積培養を繰り返し、実験に使用する微生物コンソーシアムに安定したHCB脱塩素能力を付与した。また新たに2ヶ所の土壌試料から集積培養を行い、HCB脱塩素能力を有する微生物コンソーシアムを獲得した。これらの集積培養を用い、HCBを出発物質とした脱塩素実験を行い、HCBの経時変化を追跡した。また2-5塩素化ベンゼン類を出発物質として同様の実験を行い、同様に経時変化を調べた。HCBは10日程度で完全に消失し、5塩素化ベンゼン類以下の生成物が生じた。4および5塩素化ベンゼン類も同程度の速度で消失したが、2および3塩素化ベンゼン類の微生物分解は認められなかった。培養液中からDNAを抽出し、16SrRNA遺伝子の解析を行ったところ、Dehalococcoides 属細菌が検出された。また、既知の脱塩素酵素をコードする遺伝子であるtceA・vcrA・bvcA の3つの脱塩素酵素の存在が確認された。HCB脱塩素細菌の単離を試みたが、単離株を得ることはできなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東日本大震災の影響で微生物培養設備の復旧に時間を要し研究室で維持してきた集積培養を最初から立ち上げ直したため、実験の開始が4ヶ月程度遅れてしまった。また、GC-ECD、PCR、DNAシーケンサーなどの分析装置の点検、整備、再調整にも時間が掛かり研究の進行に若干の支障をきたした。そのため、研究の開始時点で遅れが生じたが、研究自体は順調に進行しており、遅れを取り戻してきているので、研究期間内に計画内容の達成は十分可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は以下の5項目の研究を中心に実施する。1.微生物コンソーシアムの16SrRNA遺伝子クローンライブラリーと脱塩素遺伝子クローンライブラリーの作製と解析、2.HCB脱塩素酵素遺伝子の詳細解析、3.HC脱塩素細菌の系統分類と同定、4.HCB分解微生物群集の構造解析、5.微生物コンソーシアムのPOPs類に対する分解能力の評価 このうち1.はコンソーシアムの各培養段階から抽出調製したDNAを用い、16SrRNA遺伝子と脱塩素酵素遺伝子のクローンライブラリーを作製し、各試料に関し約100クローンの塩基配列の解析を行い、脱塩素の各過程における優占種の推移と脱塩素酵素発現の変化の概略を調べる。2.は上記1.の結果に基づき、HCBの脱塩素酵素遺伝子量の時間変化をリアルタイムPCRにより詳細に解析する。3.はHCB脱塩素細菌の単離が困難であるため、1のクローンライブラリーで得られた16SrRNA遺伝子配列に基づき系統分類と同定を行う。4.は1.と2.の結果に基づき、また3.の情報も加味して、HCB分解微生物群集の構造解析を行う。5.は数種類のPOPsを基質として集積培養を行い、安定したPOPs類脱塩素能力を付与した微生物コンソーシアムを得た後、POPs類に対する分解能力の評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度未使用額は微生物コンソーシアムの16SrRNA遺伝子クローンライブラリーの作製と解析を24年度に効率的に実施するために発生したものであり、24年度請求額と合わせて使用するである。 24年度は消耗品費(分析用標準試薬類、一般試薬類、高圧ガス類、ガラス器具類、プラスチック器具類)、旅費(国内、研究打ち合わせ、成果発表)、その他(通信費等)の使用を予定している。
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