2011 Fiscal Year Research-status Report
レアアースリサイクル~酸化セリウム系研磨材スラリーからの微粒子回収~
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23656567
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
佐藤 理夫 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (10396591)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 酸化セリウム / レアアース / ガラス研磨 / 微粒子回収 / リサイクル |
Research Abstract |
ガラス研磨事業所(OA機器用ガラス部品製造・特殊レンズ研磨・ハードディスク用基板製造)から使用済のガラス研磨材スラリーを入手し、凍結・解凍による分離の研究を行った。スラリーを凍結解凍することにより沈降分離が困難な研磨材微粒子の回収が容易となることは、福島大学のオリジナル技術である。凍結温度や冷却速度を変化させ、分離状態の観察や解凍後に得られる二次粒子形状の観察などを行った結果、スラリー中の水分が完全に氷結して0℃以下に温度が低下する際に二次粒子が形成されることを明らかにした。二次粒子のなかには、ガラス成分が平均組成よりも多く含まれるものがあることを発見した。二次粒子の分級により、回収した研磨材中のガラス成分量を低減する可能性がある。 使用済スラリーから凍結・解凍して得た二次粒子からなる再生研磨材の研磨性能を確認するため、光学部品の製造に用いている研磨装置(両面研磨機)を用いて研磨試験を行った。使用済スラリーをそのまま凍結・解凍したものであっても、研磨能力は相当回復していた。自然沈降を併用することにより30%程度ガラス由来成分を除去した場合には、新品の研磨材と同程度の研磨能力を有していた。熟練した検査員により、研磨品質の試験も実施した。新品の研磨材を使用した場合と比べてキズによる不良品の発生率に差はなく、再生研磨材は実用に耐えることを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
使用状況が異なる使用済研磨材スラリーに対して凍結解凍分離による研磨材回収が可能なことを確認でき、再生研磨材の研磨性能も期待以上のものであった。分離後の研磨材二次粒子の形状制御の可能性や、凍結条件によるガラス成分低減の可能性を発見でき、目標以上の成果を上げている。 遠心分離と凍結とを併用した研究を前倒しして開始した。しかしながら、市販されている冷却遠心分離では凍結に至らない(サンプルチューブの重心が変わってしまうので、凍結しないように設計されている)ことが判明した。そのため、冷凍庫と小型遠心分離機の部品を使って試作することとなり、設計・製作に時間を使った。遠心分離を併用した研究については、遅延している。 目標以上を達成した部分と遅延とがあり、全体としては計画通り「おおむね順調」と判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度までに行ってきた凍結解凍分離の基礎データ取得を継続して実施し、実用化(スケールアップ)を視野に入れた設計を行う。凍結機能付き遠心分離機により遠心分離を行いながら凍結させる実験を行う。研磨材成分とガラス由来成分を密度差と粒子径の差による分離と、凍結途中に形成される氷粒子の挙動の解明の、双方を目的としている。 23年度に多量(100リットル以上)の使用済研磨材スラリーの提供を受け、実装置での研磨試験を依頼した事業所は、当初(22年10月)に科研費の申請した時期以後に協力関係を築いた福島県内企業である。協力関係にある企業は増加しており、研磨材のリサイクルに対する様々な現場の課題をお聞きすることができる。凍結解凍分離を研究の中核に据えながら、関連する課題についても取り組んでいく。具体的には、洗浄排水中に含まれる少量の研磨材の回収、凝集沈殿層の活用、研磨材の再生品使用比率とスラリー中のガラス成分量や研磨品質との関連解析、などが挙がっている。 23年度までの成果を論文にまとめており5月に投稿を予定している。24年度は4件程度の学会発表を予定している。24年3月の学会発表の内容について新聞社の取材を受け、全国紙に掲載された。これにより複数の事業者より新規に相談が寄せられている。技術相談に応じることにより、レアアース資源のリサイクルに貢献し、本技術の普及に努めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
高額の設備購入は予定していない。 分離や分析の実験用に、試薬や消耗品を購入する。 凍結機能付き遠心分離機の周辺機器を揃え、正確な研究データを取得する。10リットル程度のスラリーを同時に凍結できるような容器を試作して、再生研磨材製造装置へのスケールアップに必要なデータを取得する。大学で再生した研磨材の研磨性能試験を委託する。 学会参加・研磨事業所への訪問・研磨試験立会い・関連情報の収集のため、出張旅費を使用する。
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Research Products
(3 results)