2012 Fiscal Year Research-status Report
廃棄プラスチックの熱分解性に優れる植物油とリサイクル技術の研究開発
Project/Area Number |
23656572
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
佐野 慶一郎 関東学院大学, 人間環境学部, 教授 (30372105)
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Keywords | 環境技術 / 廃棄物再資源化 / 触媒・化学プロセス / バイオマス / 植物 |
Research Abstract |
初年度の結果を基に、廃棄プラスチックの熱分解能力に優れた植物油を選択し、その油を調合試作した。廃棄プラスチックの供試材として、不飽和ポリエステルを用いた。 1、平成23年度の研究知見を基に、植物油の調整、改良方法として、植物油を化学変性(エステル交換による脂肪酸の変性)した中鎖脂肪酸油を準備し、ナタネ油との混合を行った。廃棄プラスチックの高分解性を目指した混合油を幾つか系統的に調整試作した。 2、試作した植物油を用いて不飽和ポリエステル樹脂の熱分解実験を行い、若干ながら分解性の向上を確認した。それらデータを基に不飽和ポリエステルの分解機構と促進作用、利点について考察した。その結果、分子量の小さい脂肪酸が油中に多いほど、廃棄プラスチックの中間分解物との反応確率が高まり、熱分解の促進につながるメカニズムになることが推察された。 3、植物油中での廃棄プラスチックの熱分解実験を重ねる中で、分子量の小さい中鎖脂肪酸を含むほど、大気下での加熱による油の蒸発量は高まり、且つ油温が320℃ 以上に達すると引火しやすい傾向が観察された。 不飽和ポリエステルは、予想以上に耐熱性に優れていた。そのため、今回の実験では、植物油の違いよる不飽和ポリエステルの熱分解性に大きな差は見られなかったが、若干の優劣は認められた。追加確認として、熱硬化性樹脂のポリウレタンフォーム(連続発泡品)を供試材として、中鎖脂肪酸を含まないナタネ油と含む油での熱分解実験を行った。その結果、中鎖脂肪酸を含むナタネ油を用いた方が、ポリウレタンの熱分解性は顕著に向上することが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定どおり、廃棄プラスチックの熱分解性に寄与する植物油を調整試作できた。実験結果より、廃棄プラスチックの熱分解性を高める植物油の構造やその反応メカニズムについても考察することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は計画に沿って、順調に進んでいる。植物油は、分子量が小さい脂肪酸を多く含む植物油が廃棄プラスチックの熱分解性に優れることを確認した。しかしながら、油温が300℃ 以上になると、大気下では引火しやすくなるため、低い温度で廃棄プラスチックを迅速に分解するための触媒の選定および、添加量の最適化が今後の重要課題となった。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
植物油に適した触媒の研究開発 さらなる廃棄プラスチックの分解性の向上を図るため、前年度に試作した植物油に適合する触媒とその添加方法を研究開発する。先の実験を行うべく、供試材と実験器具を入手する。また、供試材の調査や学会参加のための旅費、および本研究の調査やデータ解析等の人件費を計画している。本年度、プラスチック試料と植物油の試供品を入手できたため、支出が低く抑えられた。これを次年度使用額とし、今後の実験効率を高めるため、物品費(実験器具)の追加購入を計画している。
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