2012 Fiscal Year Research-status Report
核融合装置における再堆積層形成機構解明への方向性からのアプローチ
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23656579
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
増崎 貴 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (80280593)
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Keywords | プラズマ・核融合 / プラズマ・材料相互作用 / 堆積層形成 / マテリアルプローブ / 方向性 / プラズマ対向材料輸送 |
Research Abstract |
本研究は、磁場閉じ込め型核融合装置真空容器内においてプラズマと面する機器の材料が、どのように損耗してどこに堆積するのか(プラズマ対向材料輸送)を明らかにし、将来の核融合炉において、どこにどのように堆積層が形成されるかを予測できるモデルを構築することを目的としている。 平成24年度は23年度に引き続き、堆積物の発生源や輸送機構を明らかにするため、堆積層がどのような方向性を持って形成されたかを調べる「方向性マテリアルプローブ(DMP)」を、核融合科学研究所のLHD及び九州大学応用力学研究所のQUESTの真空容器内に、それぞれ複数カ所に設置した。DMP上に形成された堆積層を分析し、堆積物がどのような方向性をもってDMPの設置場所に来たのかを調べた。 目視によるDMP表面の観察では、QUESTのDMPには、判別できるような方向性が無かった。堆積量が少ない、または堆積物飛来に方向性がないと考えられる。LHDのDMPには、判別可能な堆積層形成の方向性が見られる。ダイバータ板近傍のDMPでは磁力線方向と堆積層の方向性は一致せず、プラズマ流により堆積物が運ばれたのではなく、炭素製ダイバータ板がイオン衝撃で損耗し、中性炭素原子が直接DMP上に堆積したと考えられる方向性が顕著であった。1つのDMP上の堆積層に複数の方向性が見られるものもあるが、その形成機構はまだ理解できていない。 新たなDMP分析法として、赤外線カメラによりDMP表面の放射率分布を調べた。DMP材料と放射率が異なる堆積層が形成されると、同じ温度でも赤外線強度が異なることを利用している。この結果、チタン製DMP上の炭素堆積層については、本分析結果とエネルギー分散型X線分析法(EDX)による詳細な堆積層組成分析結果とが良く一致した。 本研究で得られた知見を、11月に開催されたプラズマ・核融合学会において、ポスター形式で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、既設の核融合実験装置において、DMPを用いた堆積層形成の方向性を調べ、その物理機構を明らかにして、将来の核融合炉における堆積層形成予測が可能なモデルを構築することである。 現在は、平成23、24年度にLHD及びQUESTにおいて得られたDMP試料の分析を進めている。目視で方向性を調べることができるのがDMPの特徴であるが、さらに赤外線計測によりDMP上の堆積物分布を計測するという新しい手法での分析も行っている。一方、EDXなどの表面分析装置を用いた元素毎の堆積を調べる詳細分析が十分にできていない。また、単純な系における堆積層形成機構を理解するための、直線型プラズマ装置における実験が、まだ準備中である。 以上から、やや遅れている、と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.DMP試料分析 引き続き、平成23、24年度に得たDMP試料の分析を進める。目視及び赤外線計測による観察により、堆積層形成の大まかな方向性を調べる。さらに、核融合科学研究所のEDX装置を用いて元素毎の分布を調べる詳細分析を行い、元素毎に堆積の方向性を調べる。DMP設置位置における磁力線方向と堆積層の形成方向とを比較することにより、堆積物の発生源や輸送機構を明らかにする。 2.名古屋大学の直線型プラズマ装置における実験 LHDやQUESTなどトーラス型磁場閉じ込めプラズマ装置に比べて単純な系である直線型プラズマ装置においてDMPを用いた堆積層分析を行い、単純な系における堆積層形成機構を理解する。トーラス型装置における機構の理解のための参考とする。 3.平成25年度のLHD、QUEST実験用DMPの設置 従来の形状のDMPを、従来と同じ場所に設置して再現性を検証するとともに、これまでDMPを設置していない場所へDMPを設置して、LHD及びQUESTにおける堆積層形成の方向性の分布データを増やす。さらに、これまでの経験を基に考案した新しい形状のDMPを設置する。新しいDMPは、従来型に比べて厚みを抑えることができるため、これまでよりもプラズマに近い場所に設置してデータを取得できると期待している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.物品 LHD及びQUEST用のDMP(従来型及び新形状)の製作、直線型プラズマ装置での実験用のDMPの製作及び必要な部品の購入のため研究費を使用する。 2.旅費 九州大学及び名古屋大学での実験及び分析、ヨーロッパ物理学会においてこれまでに得られている成果をポスター形式で発表するための旅費、国内での学会発表のための旅費に研究費を使用する。 3.その他 論文投稿費、論文掲載後の別刷り購入費として研究費を使用する。
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Research Products
(2 results)