2012 Fiscal Year Annual Research Report
量子ビームを用いた無機・有機コンポジット材料の作製と結合状態評価
Project/Area Number |
23656593
|
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
吉村 公男 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 博士研究員 (40549672)
|
Keywords | 無機・有機コンポジット材料 / 電子線 / ガンマ線 / 放射線グラフト重合 / 量子ビーム / 結合状態 / ジルコニア / シリカ |
Research Abstract |
本研究では、放射線を用いた無機・有機コンポジット材料の合成手法の開発および、量子ビーム技術を用いた無機-有機結合部分の結合状態の解明を目的としている。前年度は、シリカやアルミナなどの無機セラミックスに、電子線を照射した際に発生する反応活性種に対するビニルモノマーのグラフト重合反応を検討した。今年度は、シリカやアルミナを用いたコンポジット材料の合成手法の確立および、結合状態の分析が行いやすい、ジルコニアをセラミック基材とするコンポジット材料の作製と結合状態評価を行った。電子線に比べ簡便で、照射コストの低いγ線を用いてシリカやアルミナに対するグラフト重合反応を検討した結果、電子線を用いた場合と遜色なくグラフト重合が進行することがわかり、表面に高分子の被覆が形成されることをSEM-EDS分析から確認した。熱重量分析からグラフト率を算出し、反応条件を比較した結果、グラフト重合時に反応溶液を激しく撹拌することでグラフト率が上昇することが明らかになった。これは、撹拌時に起こる無機基材の劈開または剥離によってグラフト重合の起点となる活性表面が露出したためと説明される。ジルコニアについても同様の手法でコンポジット材料が作製でき、得られたサンプルのXPS測定を行ったところ、Zr-O-C結合に帰属されるO1sスペクトルにおいて顕著な変化が観測された。一方で、Zr-C結合に関係するZr3dスペクトルには変化が見られなかったことから、グラフト重合は主として酸素原子を起点として進行しているものと考えられる。現在、各原子における電子状態の情報がより詳細に得られる、放射光を用いたXAFS測定の目途をつけることができたため、Zr-C結合の有無やSi-C、Al-Cなどの金属-炭素結合の選択的形成方法について今後研究を進める予定である。
|