2011 Fiscal Year Research-status Report
高速電気化学反応のための酸化鉄/炭素複合体を用いたリチウム-空気電池電極
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23656603
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
日比野 光宏 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (20270910)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 空気電池 / 二次電池 / 複合体電極 / 電気化学触媒 |
Research Abstract |
高速な空気極反応のための酸素還元触媒の候補として,ブラウンミラーライト構造(以下BM構造)のAFeO2.5(A = Ca, Sr)に着目した.BM構造は触媒としてしばしば用いられるペロブスカイト構造から酸素が規則的に抜けた構造である.SrFeO2.5は,塩基性水溶液中で電気化学的に酸化すると,酸素空孔が埋まっていきSrFeO3となることが知られており,可逆であることも報告されている.他の物質を還元する際に,酸化したSrFeO2.5+dを電気化学的に還元すればもとのSrFeO2.5に戻るため,電気化学的還元触媒としてはたらくことが期待できる.そこで,水溶液中での還元能を調べることにしたが,1M水酸化ナトリウム水溶液中では,ブラウンミラーライト構造の試料からはハイドロガーネットA3Fe2(OH)12(A=Ca, Sr、同HG)が生成し安定でないため,使用できないことがわかった.一方,空気中でアニールすることによって,酸素組成が初めから2.5よりも大きい試料(酸素量によって斜方晶,正方晶,あるいは立方晶のペロブスカイト構造をとる)が得られることが知られており,これらは,HGへの変化が見られず安定であった。HG中の鉄は3価であるため,平均価数が3よりも高い場合には還元性試薬がない環境では安定であると考えられる.斜方ペロブスカイト構造のSrFeO2.742(1)を出発とするとSrFeO2.5となるまで電気化学的に酸素を引き抜くことができ、その後、再びSrFeO2.742(1)を越えてSrFeO3に向けて酸素を挿入することができた。また,HG相の存在しないA=Baの場合,またCa,Srの場合も半分以上Laで置換すると安定となることが明らかとなった.これらについては次年度に触媒としての機能を調べていく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,種々の測定に適した電気化学セルを設計し、電極集電体の種類および形状、電極の配置など測定系を確定した.g-Fe2O3/ケッチェンブラックをまず行うが,これら以外の物質の組み合わせを調べるという計画通り,様々な検討を行った.その結果,ペロブスカイト関連構造の鉄系複合酸化物の有用性に至り,24年度に詳細に調べる物質を選定できた.また,計画通り,さまざまな種類の鉄系酸化物を触媒とした多孔電極について、電気化学的に評価を行った.炭素材料としては,種々の材料があり,一種類には限定していない.また炭素材料によって複合体中の酸化物の適切な含有率,電解質が異なるため,炭素材料の検討とともに最適比率,電解質の決定についても次年度に継続して行う.これら作製した試料について、計画通り定電流充放だけでなく、基本特性を明らかとするためサイクリックボルタンメトリ、インピーダンス測定も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
当初に計画した通り,初年度に選定した鉄系酸化物を用いて空気電池正極での基礎的な反応メカニズムを調べる.また、リチウム-空気電池作動条件や測定の条件を変えて性能評価を行う。ただし、初年度に完了していない内容も並行して進める(計画書にもそのように記載した).電気化学触媒についての新しいアイデアを得ているので,その評価にも力を入れて進める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
材料合成のための原料の他に,電気化学測定のための電気化学セル,電極としての白金,金,グローブボックス用の不活性ガスなどの消耗品が主な用途となる.
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