2012 Fiscal Year Research-status Report
上空・高度域の風力エネルギーの取得・伝達・変換技術への挑戦
Project/Area Number |
23656605
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
新川 和夫 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (00151150)
|
Keywords | 再生可能エネルギー |
Research Abstract |
風力エネルギーは風速の3乗に比例するので,風車の設置場所として,風況の良好な地点を選定することが重要な課題である.風は地表の摩擦の影響を受けるため,風速は地表近くでは小さく,高度が増すにつれて大きくなる.本研究では,現在未利用である上空・高度域の風力エネルギーを取得するための技術開発を進めている.平成24年度は,インフレータブルカイト,飛行船と風レンズ風車,回転気球から得られた実験データに基づき,3方法の性能を比較した.そして,上空・高度域の風力エネルギーの取得・伝達・変換するための方法を検討した.その基準としては,発電効率のみでなく,安全性なども含め総合的な面を考慮した.その結果、本年度は,①上空・高度域の風力エネルギーの取得法として,回転気球を改良した「空中浮上型エアリアル風車」を試作した,②風力エネルギーの蓄積・伝達法として,係留用高分子繊維ロープの捩じり弾性エネルギーを応用した.そして,試作したエアリアル風車の回転安定性を検討し,係留ロープに作用するトルクと張力を測定した.③またモデル解析を行い,測定値と比較した.その結果,ほぼ設計通りの風車が作製できたこと,すなわちエアリアル風車で風力エネルギーが取得できること,高分子繊維ロープでエネルギーを蓄積・伝達できることの可能性を明らかにした.さらに,解析に基づいたエアリアル風車の改良,係留ロープのトルクを利用した発電装置の設計を行った.④また真空樹脂含浸法による炭素繊維強化複合材料の作製および力学特性評価を行っており、これを更に発展させることによりアルミ製であった風レンズ風車の大幅な軽量化を図ることが可能となった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、インフレータブルカイト,飛行船と小型風レンズ風車,回転気球から得られた実験データに基づき,主として回転気球に改良を加えた「空中浮上型エアリアル風車」を試作し、その性能評価を行った。 (1)エアリアル風車の中央部として、直径1.3m,全長8.2m,充填ガス容量18m3のロケット型気球を試作した.この気球の先端部に係留用およびエネルギー伝達用のロープを,また後部に翼型形状のブレード3枚を取り付けた.その寸法は0.65 x 0.8 m2 とし,取り付け角は14°とした.また後部には,風車が水平になるように,カウンターウェイトを取り付けた. (2)エネルギー伝達で重要である係留ロープに作用する張力とトルクを計測するために,張力計とトルク計を直結させた装置を試作した.なお張力計としてフォースゲージ,またトルク計としてハンディータイプトルク計を使用した.また記録計として,データロガーを利用した.係留ロープの引張り方向とのずれが小さくなるように,張力計とトルク計は2軸回転台に設置した. (3)風車を上空に浮上させ,係留ロープ30mに作用する張力とトルクを計測した.張力は30~70Nで変動した.この原因として1~4m/s程度の風速変化が挙げられる.ただしこの風速変化でも風車が安定して回転することが確認された.一方,トルクは徐々に増加し,計測時間10分で約2.2 Nmに達することを実証した. (4)風車のモデル解析を行い,係留ロープに作用する張力とトルクを評価した.このモデルでは以下の条件を仮定した.①風車は風向に対して水平を維持する.②風車には一定値の浮力が作用する.③風車には変形は生じない.そして,風速4m/sに対し,張力60N,トルク6Nmと,それぞれ妥当な値が得られた.この解析に基づき風車を改良と発電装置の設計が可能となった.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,試作した空中浮上型エアリアル風車の改良を図る。このため、ロケット型気球の後部に取り付けた翼型ブレードの枚数、その形状と寸法、また取り付け角を詳細に検討する。これによりエアリアル風車の高性能化を図る。また係留ロープのトルクを利用した発電装置の試作と改良を行う.そして,上空・高度域の風力エネルギーの取得・伝達・変換するための最適な方法を選定する.その選定基準としては,発電効率のみでなく,安全性なども含め総合的な面を考慮する.さらに風レンズ風車の大幅な軽量化を図るため、真空樹脂含浸法による炭素繊維強化複合材料の作製と強度評価を継続して行う.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に計画した実験が当初の予定より早めに達成できたため168,425円の残金が生じたが,これは平成25年度に繰越して請求することとした.したがって,当初助成金1,000千円と繰越金の合計により,平成25年度の研究費は1,168,425円となる.その使用計画は下記の通りである.(1)空中浮上型エアリアル風車の改良のための材料・部品費として200千円を計画.(2)係留ロープのトルクを利用した発電装置の作製費として300千円を計画.(3)エアリアル風車と小型風レンズ風車の掲揚料として300千円を計画.(4)研究成果発表のための旅費として300千円を計画.(5)小型風レンズ風車の軽量化のための材料費として約68千円を計画.
|
Research Products
(5 results)