2011 Fiscal Year Research-status Report
水分解用色素修飾光触媒のためのアンテナ色素を模倣した色素複合体の創製
Project/Area Number |
23656606
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
萩原 英久 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30574793)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 無機半導体光触媒 / 水の光分解反応 / 色素修飾 / 電荷移動 / ポルフィリン / 有機色素 |
Research Abstract |
従来の研究で、水の光分解活性を示すGaN:ZnOをポルフィリン系色素で表面修飾すると、活性が向上することを見出した。本研究では修飾色素を複合して用いることで、太陽光下で効率よく水を分解する光触媒を開発することを目的とし、修飾色素や無機半導体の探索を中心に、水の光分解活性の向上効果について検討した。従来の研究で用いていたポルフィリン色素に代えてアゾ系やピレン系、キノン系の有機色素でGaN:ZnOを修飾して水の光分解を試みたところ、水素及び酸素の生成速度が向上し、特に1-メチルピレンやアリザリンイエローRが高い活性の向上効果を示した。しかし、これらの色素を用いると量論比よりも酸素の生成量が少なく、特にキノン系の色素を用いると、光触媒中に生成した正孔によって酸化分解していることが示唆された。また、可視光エネルギーの変換効率を向上させるために、従来の研究において高い色素修飾効果を示していたポルフィリン系色素のCr-TPPClと、コロネンやカプサイシンなどの有機色素を複合して水の光分解反応を行った。触媒の紫外可視吸収スペクトルの結果からは、色素を複合してもポルフィリン系色素の会合状態に大きな変化は観測されなかったことから、複合した色素は別々に凝集していることが示唆されたものの、水の光分解活性は色素の複合により向上することがわかった。以上より、修飾色素の複合は水分解活性の向上に有効であり、特にポルフィリン系色素のCr-TPPClと炭化水素系化合物のコロネンの組み合わせが効果的であることを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究目的は、効率よく可視光を吸収し、電荷移動を担う色素に光励起エネルギーを集める色素複合体の構築を目指して様々な有機色素と金属錯体色素の組み合わせを探索することと、複合色素内のエネルギー伝搬機構について調べることであった。前者に関しては、修飾色素として用いる色素のスクリーニングを経て、GaN:ZnO光触媒の水の光分解活性が向上する色素の組み合わせ(クロムテトラフェニルポルフィリンクロリドとコロネン)を見出すことが出来ており、後者に関しては光吸収スペクトルから色素の凝集状態を推測するところまで研究を進めることができた。しかし、当初の計画ではさらに複合色素間のエネルギー伝搬機構の解析まで行う予定であったが、現在のところ、過渡分光測定による分析が終わっていない状況であるため、おおむね順調に進展していると自己評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在のところ、GaN:ZnO光触媒の水の光分解活性が向上する色素の組み合わせを見出していることから、ポルフィリン系色素と炭化水素系化合物(色素)を中心に、さらに水分解活性を向上させることができる色素の組み合わせを探索するとともに、複合色素間のエネルギー伝搬機構を過渡吸収や過渡蛍光分析、アクションスペクトル測定により検討する。また、触媒上における色素の凝集状態を制御し、複合色素間の接触面積を増加させることで、色素間のエネルギー伝搬の促進を狙う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
一般に、光触媒の過渡吸収分析を行う際には、触媒表面に吸着した大気中に含まれる水蒸気や酸素などによる光励起電子のトラップを避けるために、真空下または乾燥した不活性ガスの下で測定を行う。現在、過渡吸収測定に適した真空系を持っていないため、次年度の研究費で新たに真空ユニットを購入し、測定に用いる予定である。また、アクションスペクトル測定に用いるバンドパスフィルターも購入予定である。また、前年度に引き続き、修飾色素の組み合わせを検討するため、多くの材料の候補を試す必要があることから、炭化水素系化合物や金属錯体色素等の試薬の購入も検討している。
|