2012 Fiscal Year Research-status Report
水分解用色素修飾光触媒のためのアンテナ色素を模倣した色素複合体の創製
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23656606
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
萩原 英久 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30574793)
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Keywords | 水の光分解反応 / 色素修飾 / ポルフィリン / 電荷移動 |
Research Abstract |
従来の研究で、水の光分解活性を示すGaN:ZnOをポルフィリン系色素で表面修飾すると、活性が向上することを見出した。本研究では修飾色素を複合して用いることで、太陽光下で効率よく水を分解する光触媒を開発することを目的とし、修飾色素や無機半導体の探索を中心に、水の光分解活性の向上効果について検討した。 従来の研究で用いていたポルフィリン色素に代えて、ポルフィリンのピロールユニットを増やした環拡張ポルフィリンを修飾色素として用い、GaN:ZnOの表面にコートして水の光分解を試みた。その結果、ピロールユニット数が6であるヘキサフィリンを用いると、ポルフィリンを用いた時と比較して水素及び酸素の生成速度が向上することがわかった。他の環拡張ポルフィリンは水の光分解反応中に分解しやすいのに対し、ヘキサフィリンは分解することなく、色素修飾効果を示した。一方、環拡張ポルフィリンの環構造の違いによるRh2O3やNiO等の助触媒の酸化数や、GaN:ZnOからの電荷移動速度への影響についても検討したが、色素分子の構造によってこれらの因子は大きく影響を受けないことがわかった。以上の結果から、ヘキサフィリンが最も良好な色素修飾効果を発現したのは、環構造の拡張により光吸収域が長波長シフトしたことと、色素の安定性が理由であると結論付けた。 以上より、環拡張ポルフィリンはGaN:ZnO光触媒の水分解活性の向上に有効であることを見出した。前年度の成果と組み合わせ、さらに可視光の長波長域に吸収を有する色素と組み合わせて修飾色素として用いることで、高効率な水分解用光触媒の開発につながると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究目的は、効率よく可視光を吸収し、電荷移動を担う色素に光励起エネルギーを集める色素複合体の構築を目指して、これまでに報告されていない金属錯体色素の光エネルギー変換への応用を試み、他の色素と組み合わせたうえで、複合色素内のエネルギー伝搬機構について調べることであった。今年度は、これまで報告されていなかった環拡張ポルフィリンに光エネルギー変換材料としての可能性を見出すことができたものの、複合効果まで検討することができなかった。しかしながら、複合効果については前年度の成果である程度の目途が付いているため、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ、GaN:ZnO光触媒の水の光分解活性が向上する色素の組み合わせを見出していることから、環拡張ポルフィリン系色素と炭化水素系化合物(色素)を中心に、さらに水分解活性を向上させることができる色素の組み合わせを探索するとともに、複合色素間のエネルギー伝搬機構を過渡吸収や過渡蛍光分析、アクションスペクトル測定により検討する。また、触媒上における色素の凝集状態を制御し、複合色素間の接触面積を増加させることで、色素間のエネルギー伝搬の促進を狙う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
光触媒の過渡吸収分析を行う際には、触媒表面に吸着した大気中に含まれる水蒸気や酸素などによる光励起電子のトラップを避けるために、真空下または乾燥した不活性ガスの下で測定を行う。現在、過渡吸収測定に適した真空系を持っていないため、次年度の研究費で新たに真空ユニットを購入し、測定に用いる予定である。また、これまでの研究成果に基づき、良好な修飾効果を示した色素を連結し、色素複合体としての調製を試みることから、炭化水素系化合物や金属錯体色素、有機溶媒等の試薬類の購入も検討している。
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Research Products
(4 results)