2011 Fiscal Year Research-status Report
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23657005
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石川 冬木 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (30184493)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樽本 雄介 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (70551381)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 遺伝学 / ゲノム / 発現制御 / 発生・分化 / エピジェネティックス |
Research Abstract |
従来、条件的ヘテロクロマチンの存在が知られていなかった分裂酵母において、我々は、mei4, ssm4をはじめとする減数分裂に必要な遺伝子が条件的ヘテロクロマチンを構成し、当該遺伝子座におけるヒストンH3の9番目のアミノ酸リジン残基(H3K9)が栄養増殖期においてはメチル化され、減数分裂期においてはメチル化されていないことを見いだした。本研究では、このH3K9のメチル化制御の分子機構を明らかにすることを目的としている。既に、mei4, ssm4由来のmRNAは、それ等に含まれるDSR (determinant of selective removal)配列依存的にエクソームによって分解されることが知られており、そのmRNA分解には、Mmi1とRed1因子が必要であることが報告されている。我々は、本研究において、mei4, ssm4遺伝子におけるH3K9メチル化に、DSR, Mmi1とRed1が必要であり、またDSRに加えてDSRに隣接する機能未知の遺伝子領域の転写が必要であることを明らかにした。さらに、Red1はヒストンメチル化酵素Clr4と物理的相互作用をすることを見いだしたことから、mei4, ssm4遺伝子におけるH3K9のメチル化には、DSRとその近隣配列の転写に依存したMmi1-Red1-Clr4からなるヒストンメチル化酵素のリクルートメントが重要であると考えている。これまでに、分裂酵母セントロメア、テロメアなどの構成的ヘテロクロマチン形成において、RNAi経路が重要な役割を果たすことが知られている。興味深いことに、上記H3K9メチル化修飾には、RNAi経路は必要ではないことから、今回、我々が明らかにした条件的ヘテロクロマチン形成機構は、これまでに知られていない新しい分子機構であり、今後、その制御について生化学的観点から解析したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
条件的ヘテロクロマチンは、細胞分化プログラムによるキューあるいは、細胞内外の環境変動に反応して、ゲノム上の特定の遺伝子領域にヘテロクロマチンが可逆的に形成されることをさす。それは、細胞分化、がん化、老化などの重要な生命現象の遺伝子プログラムの根幹をなす。また、その維持機構の理解は、細胞が特定の分化状態を記憶し機能を果たす分子機構を明らかにすることにつながる。さらに、その解除機構の理解は、生殖細胞や幹細胞などの未分化細胞が生体内で生理的に形成される仕組みを明らかにし、iPS細胞作成技術などによって人為的に多能性分化細胞を調製する技術の改善に役立つ。しかし、これまでに条件的ヘテロクロマチンがいかに形成・維持・崩壊するのか、その分子機構は多くが未解明なままであった。本研究は、分裂酵母という遺伝学的研究が容易な生物種において初めて条件的ヘテロクロマチンの存在を明らかにし、その形成機構の一つとしてDSR-Mmi1-Red1-Clr4からなる新規経路を同定したものである。従って、第1に、条件的へテロクロマチンがいかに形成されるのかを明らかにする端緒をつけたものといえる。また、第2に、本研究がこれまでに明らかにした経路について、今後、遺伝学的・生化学的手法を駆使することによって、条件的へテロクロマチンをより高い観点から理解する方法論を提供するものと言える。 以上の理由により、「当初の計画以上に進展している」と自己評価をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度は、mei4遺伝子座を様々に改変した細胞株、および、mmi1, red1, clr3遺伝子変異株を用いた遺伝学的実験によって研究を進めてきた。平成24年度は、これらの実験結果から提唱するに至った、DSR-Mmi1-Red1-Clr4経路が実際に存在し機能することを生化学的な手法を活用しながら明らかにしたい。具体的には、蛋白質精製、質量分析機による蛋白質同定、蛋白質修飾の同定などによって、DSR RNAとMmi1, Red1, Clr4がリボヌクレオチド蛋白質複合体を形成しているかどうかを確認する。このようなヒストンメチル化酵素Clr4を含む複合体が実際に存在した場合には、それがどのような細胞外からのシグナルによって形成され、mei4やssm4などの特定の遺伝子にリクルートされ、ヘテロクロマチンを形成するのかを明らかにする。そして、蛋白質の翻訳後修飾、遺伝子の転写とヘテロクロマチン化因子との相互作用を中心に、生化学的手法と遺伝学的手法を組み合わせた研究を進めて、条件的ヘテロクロマチン制御機構の全貌の解明を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
細胞培養試薬610千円蛋白質精製のための抗タグ抗体、ビースなどの試薬 800千円DNA制限酵素、クローニングなどの分子生物学的実験試薬 800千円
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Research Products
(14 results)