2011 Fiscal Year Research-status Report
細胞分化スイッチ機構を担うSOX-パートナー因子複合体のゲノム標的認識
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23657007
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
近藤 寿人 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (70127083)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蒲池 雄介 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (90263334)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 発現制御 / 遺伝子 / ゲノム / 細胞分化 / 転写因子 |
Research Abstract |
本研究は、次の目的で実施している。細胞分化は、複数の転写制御因子がつくる複合体がスイッチ機能を果たすことによって進行する。これらの複合体が結合するDNA配列は、個々の因子が単独で結合する配列の和ではなく、複合体に固有のものである。しかし、転写因子複合体のDNA結合配列を体系的かつ網羅的に研究した例はなかった。 そこで、以下の3段階にわけて、新たな研究を実施する。各段階は、概ね本研究計画の3つの年度に対応している。(1) 転写制御因子SOX2と、PAX6やPAX2がつくる複合体のin vitroでのDNA結合配列を網羅的に集めて分類し、(2) それらの配列群への転写制御因子複合体の結合の物理化学的な特性を解析するとともに、それらの配列群のエンハンサーとしての機能を評価し、そして (3) それらの配列群のゲノム中での分布とin vivoでの機能評価をおこなう。 平成23年度の研究では、SOX2-PAX6ならびにSOX2-PAX2複合体が結合する配列群を網羅的に収集することを中心とした。 これまでには、転写制御因子複合体のDNA結合配列を網羅的に収集(SELEX)する研究が行われたことはなく、新しい方法を開発する必要があった。そこで非RI標識プローブを使ったEMSA(electrophoretic mobility shift assay)による新しいSELEX法を開発した。さらに、これまでのSELEXでは、転写制御因子のDNA結合ドメインだけを用いて実施するのがほとんどであったが、複合体による結合を考慮して、転写制御因子全長を用いるという難度の高い方法を採用した。 この新しい方法によって濃縮されたSOX2-PAX6複合体、SOX2-PAX2複合体、PAX6単独、PAX2単独の各々の結合配列について、数10万個以上の配列を次世代シーケンサーを用いて決定し、その分類を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はいくつかの技術的な困難を克服して順調に進行し、現在までの達成度は、研究全体の三分の一、平成23年度の目標のほぼ100%であるといえる。 平成23年度の研究では、これまで例のない、転写制御因子複合体によるSELEXを実施し、そのために非RI標識probeを使ったEMSAによるSELEXという斬新な方法を開発した。また、転写制御因子の分子全長を純化し、それを用いてSELEXを行うという難度の高い研究方法をとって成功した点も、高く自己評価できる。サンガー法で予備的に決定した数100の結合配列を参考にして、EMSAから得られた配列プールをどのようにして分類するかというアルゴリズムも開発した。現在進行中の配列群の分析から、これまで誰も目にしたことがない斬新な研究成果が生まれることを期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に展開していることから、予定通り、平成24年度には、SOX2-PAX6ならびにSOX2-PAX2複合体の、分類された各々のタイプの配列群への結合の物理化学的な特性を解析するとともに、それらの配列群のエンハンサーとしての機能を、細胞へのトランスフェクションとルシフェレース・アッセイを組合わせた方法で評価してゆく。 平成25年度には、in vitroで決定された転写制御因子複合体の結合配列群をin vivoでの機能と対応させるために、それらの配列群のゲノム中での分布と機能評価をおこない、それらが具体的にどのような遺伝子群を制御しているのかをあきらかにする。 この平成25年度の研究の準備として、平成24年度のうちに、各転写制御因子のゲノム中での結合部位を同定するためのChIP-Seqの作業を開始する
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の研究推進方策に従って、平成24年度では、大量の塩基配列決定のための試薬と外注のための経費、大量の塩基配列群の分類のための大型計算機使用経費、DNA-複合体結合反応の速度論的な解析ならびに平衡状態での結合解析に要する経費、大規模なルシフェレース・アッセイに要する経費、成果の学会発表のための旅費などに、研究費を使用する計画である。
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Research Products
(3 results)