2011 Fiscal Year Research-status Report
3倍体プラナリアが正常な半数体を創る減数分裂の分子機構
Project/Area Number |
23657008
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松本 緑 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (00211574)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 3倍体 / 減数分裂 / 有性生殖 / プラナリア |
Research Abstract |
通常3倍体プラナリア個体は減数分裂に置ける対合ができないために、真の有性生殖はできないと考えられている。しかし、申請者は3倍体プラナリアが生殖細胞において染色外がキアズマを形成し、2匹の交接により次世代を作り、その次世代個体には3倍体と2倍体が混在することを示している。この次世代の産生が、真のゲノムを混合する有性生殖を行う事により起こっているか否かを明らかにするために、掛け合わせ実験により次世代個体を作成した。その際、マイクロサテライト遺伝子を用いて、その次世代個体ゲノムには双方の親由来のゲノムが混在している事を示し、3倍体個体であっても有性生殖を行う事を示している。 この3倍体個体の生殖細胞形成における染色体分配機構を解明するために、1) 生殖細胞形成における染色体削減時期の特定、および、2) 分裂期染色体マーカーの創出に取り組んできた。1) 生殖細胞形成における染色体削減時期の特定を行うために、2) 分裂期染色体マーカーの創出を行っている。トランスクリプトーム解析から、生殖細胞特異的遺伝子としてpiwi1-4, nanos、減数分裂関連の遺伝子として Rad51, Rad51C, Rad51-like, spo11の4つを単離し、その配列と発現部位を明らかにしている。また、それぞれに対するポリクローナル抗体も作成中である。その生殖細胞におけるタンパク質の局在を調べようとしている。生殖細胞形成における染色体削減時期の特定を行うために、これらのマーカー分子を用いた免疫染色,蛍光in situ hybridizationなどと、LSCを用いた核相の決定を同時に行う実験系を開発中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3倍体プラナリア個体が真のゲノムを混合する有性生殖を行う事が可能か否かを明らかにするために、掛け合わせにより次世代個体を作成した。マイクロサテライト遺伝子を用いてその次世代個体ゲノムには双方の親由来のゲノムが混在している事を示し、3倍体個体であっても有性生殖を行う事を示した。トランスクリプトーム解析から、減数分裂関連の遺伝子 Rad51, Rad51C, Rad51-like, spo11の4つを単離し、その配列と発現部位を明らかにしている。また、それぞれに対するポリクローナル抗体も作成中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
1年目に引き続き、1) 生殖細胞形成における染色体削減時期の特定、および、2) 分裂期染色体マーカーの創出に取り組む。さらに、1年目に作成した抗体と2)で作成した抗体を用いて、3) 染色体削減時の染色体挙動の解析を行い、機構を解明する。1) 生殖細胞形成における染色体削減の時期の特定:3倍体の多能性幹細胞から生殖細胞が形成される過程において核相の変化を調べる。完全に有性化した個体もしくは有性化途中の個体から卵巣部の細胞を解離し、免疫染色による細胞の標識とDAPI等による核染色を行う。初期生殖細胞の染色にはPiwiまたはNanos抗体、減数第一分裂前期の生殖細胞の染色にはSpo11およびRad51ホモログに対する抗体を用いる。レーザースキャニングサイトメータを用いてシグナルを検出するとともにDNA含量を測定し、各ステージにおける核相を決定する。それらを比較し、染色体削減が起こる時期を特定する。2) 分裂期染色体マーカーの創出: これまでに得られているコヒーシンサブユニットrad21およびsmc1の部分配列を元に、RACE法により全長配列を決定し、抗体作製を委託する。また、セントロメアタンパク質(CENP-A、CENP-Bなど)の相同遺伝子を探索し、全長配列を決定し、抗体作製を委託する。3) 染色体削減時の染色体挙動の解析: 1)で特定した染色体削減が起こる時期における染色体の動きを、コヒーシンおよびセントロメアに着目して観察する。有性化個体から卵巣部の細胞を分離し、作製した染色体削減時期を識別する分子マーカーとセントロメア抗体、コヒーシンサブユニット抗体を用いて免疫染色を行い、細胞内の染色体の位置と形状、および相同染色体のペアリングが起きているかどうかを検証する。また、チューブリン抗体により紡錐体の微小管を染色し、染色体の動きとの関連を調べる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
生殖細胞形成における染色体削減の時期の特定と染色体挙動の解析においては、免疫染色と核染色を行うため、蛍光標識二次抗体を購入する。染色体挙動の観察時には多重染色を行うため、各種の一次抗体に対して異なる蛍光分子で標識された二次抗体を用意する。免疫染色シグナルが弱い場合には、シグナル増感のためTSA増感システムを購入する。分裂期染色体マーカーの創出には、目的遺伝子の配列を決定するためにRACE用のキットとクローニング試薬およびシーケンス試薬を購入する。さらに、抗体作製のための委託費が必要となる。尚、本年度作成予定の抗体の活性上昇に時間が要したため、本年度中に間に合わず、抗体作成の経費が次年度使用となった。
|