2011 Fiscal Year Research-status Report
アリの幼虫が発する振動音の機能と普遍性に関する研究
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23657012
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
東 正剛 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 教授 (90133777)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 行動生態 / 社会性昆虫 / コミュニケーション / アリ / 幼虫 |
Research Abstract |
本年度は、アリやその共生蟻客類が発する音を録音できる小型携帯用装置の開発を行った。 アリが発する音を録音するためには、外部からの音を遮断した状態でアリの行動を観察することと、録音機材の感度を高め、できるだけ小さな音まで検出できるようにする必要がある。 まず、前者の課題解決のために、透明なアクリルで作ったアリの行動観察容器を、更にもう一重のアクリルケース(厚さ10mm)で覆うことによって、外部からの物理的なノイズを大幅に削減することに成功した。より以上のノイズ削減のために、この録音装置を防音箱の中に設置した。防音箱の外面には防振ゴム(厚さ7mm)、その内側に吸音スポンジ(厚さ5cm)と、それぞれ異なる材質からなる防音素材をはり、録音装置をこれで包み込むことにより特に低周波ノイズをほぼ取り除くことができた。防音箱の中でアリの行動を観察するため、ハイビジョン画質で至近距離から録画できるビデオカメラと、小型LED照明のセットを入れ、吸音スポンジで固定した。 また、後者の課題解決のために、アクリル製のアリの行動観察容器中に入れたアリの人工巣(アリが幼虫の世話をする場所)の底を薄いプラスチックフィルムにし、その下に録音用マイクロフォンを固定した。プラスチックフィルムとマイクロフォンの間を繋ぐように、プラスチックの薄片を設置する(人間の耳における耳小骨の役割を果たす)ことで、人工巣内でアリが発する音・振動が直接的にマイクロフォンで検出できるようにした。 すなわち、人工巣の底面すべてがマイクロフォンになっていると考えても良い。マイクロフォンで検出した音をパソコン上で録音し、Audicity等の音響解析ソフトで分析できるようにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アリの幼虫や成虫、その共生蟻客類が発する音を収録し、行動を解析するための高性能録画録音分析装置の開発と小型化に成功しており、概ね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
本装置により得られた音響・振動の中には再現性の少ないノイズも多々あり、膨大な情報の中から機能を持った真のシグナルを見出す必要がある。 これを見出すために、1つ1つの音響・振動シグナルについて実際に人工的に同様のシグナルを作成した場合のアリの反応を試すプレイバック実験系を作出する必要がある。これを実現するため、補助的にキーエンス社からレーザー変位計、ハイスピードビデオカメラを賃借する。 また、これまでは既に音響に関する予備データがあるシワクシケアリを主な実験材料としてきたが、音を発することが確認されている二節腰柄系の日本産アリ類では幼虫が小さく、分析に限界がある。 従って、音が主要なコミュニケーション手段の1つと考えられている南米産ハキリアリ、グンタイアリ、大型ハリアリ(Paraponera等)など大型アリ類の幼虫を用いて実験する必要がある。 そこで本年度はパナマ・バロコロラド島にある米国スミソニアン熱帯研究所に我々が開発した携帯用観察装置を持ち込み、中南米で採集する大型ハキリアリ、グンタイアリ、ハリアリ類を用いて実験を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
バロ・コロラド島(パナマ)のスミソニアン熱帯研究所に約2週間滞在し、パナマおよびその周辺国に分布する大型アリ類を材料として、観察・実験を行う。 本研究では、主にバロ・コロラド島で長年に亘ってハキリアリやグンタイアリの研究を行い、スミソニアン研究所にも所属された経験を持つ北海道教育大学函館校の村上貴弘准教授の協力を仰ぐ。本調査に要する旅費滞在費として、100万円を見積もっている。 さらに実験補助員として、北海道大学大学院地球環境科学研究院の博士研究員・松林 圭博士を同伴させる。尚、同博士の旅費・滞在費として、平成23年度の効率的経費使用により生じた繰越金のうち35万円を当て、プレイバック実験系作出に10万円当てる。 また、事務補助員の雇用に30万円、残りを消耗品購入等に使用する。
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Research Products
(1 results)