2012 Fiscal Year Research-status Report
シロアリの異種混合コロニーを用いたシロアリ共生微生物群集の成立過程の解析
Project/Area Number |
23657013
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
北出 理 茨城大学, 理学部, 准教授 (80302321)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 悟子 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (80342830)
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Keywords | 共生 / 原生生物 / 群集 / 群集構造 / 大規模移入 |
Research Abstract |
本年度は、以下のような研究結果が得られた。 近縁なヤマトシロアリ属の3種(ヤマト・カンモン・アマミシロアリ)の有翅生殖虫を用いて、同種ペア及び雑種ペアを作製して消化管内の共生原生生物群集の経時変化を調べる実験を昨年度から継続して行った。ペア形成から600日後の種組成を調査した結果、前2種の同種コロニーはペア作成時から基本的に種組成に変化がなかったが、アマミシロアリでは特異的な1種が欠損した。ヤマトとカンモン、ヤマトとアマミの雑種コロニーでは、調べたコロニーは全てヤマト型の組成に収束した。一方、カンモンとアマミの同種コロニーは、両種の特異的組成の中間的な組成に収束した。各型のコロニーの群集構造の類似性についても同様の傾向がみられた。以上の結果は、シロアリの消化管内原生生物群集はランダムな種の組合せによりできるわけではなく、長期に安定な群集は特定の種の組からなるという仮説を支持するものである。これは閉鎖的環境下にある微生物群集が形成される際の一般的特徴と考えられる。 またヤマトシロアリとカンモンシロアリの2種を用いて原生生物群集の変化を検出するためt-RFLP法の適用を行ったが、直接検鏡以上の十分な変異を検出することが難しいことが明らかになった。そこで混合コロニーと同種コロニーで次世代シークエンサーを用いたrRNA遺伝子の配列取得を行い、群集混合後の詳細な微生物相の比較を行うこととし、その予備的な調査と実験を行った。 さらにイエシロアリの野外コロニーの群集を調査することで、その群集組成の変異を明らかにするとともに、ワーカーとソルジャーのカスト間での群集構造の相違を解析し、群集サイズが小さいソルジャーで変異が大きい事を明らかにした。また、Teranympha属の原生生物のマイクロサテライトマーカー作製を継続して行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の中心となる雑種コロニー形成後の原生生物群集の組成の経時的変化については、計画を3種の組み合わせに拡張して順調に遂行できており、微生物群集の大規模攪乱後の再形成過程と、群集の形成に影響する要因について重要な知見が得られている。遺伝マーカーを用いた組成のモニタリングについて、AFLPを用いた方法では十分な情報を得ることが難しいことが明らかになったため、新たな方法を用いてこれを行うこととし、このための準備と予備的検討を行っている。また個別の種に対応したマーカーの作製を継続して行っており、あわせて行った野外コロニーの組成調査から、群集構造の決定要因について新しい知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ヤマトシロアリ属3種に混合コロニーをつくらせる実験について、約700日後の群集構造の直接検鏡による調査と最終的なデータのとりまとめをおこなう。さらに、正準対応分析と主成分分析を用いて経時的な類似性解析を行う。 また、ヤマトシロアリ、カンモンシロアリの2種を用いて、約700日後の混合コロニーの消化管内微生物からゲノムDNAを抽出し、NGシーケンサーを用いて、rRNA遺伝子を標的としたキャラクタリゼーションを行う。微生物相の遺伝子による把握を通じ、混合を起こした場合とそうでない場合の原生生物・細菌組成の比較を行い、原生生物組成の変化と連動した細菌の組成変化を明らかにする。材料としては、異種混合実験ですでに作製しているコロニーを用いる。標的配列部位についてはすでに検討を行っているが、ほぼ同一の配列を持つものを種に相当する単位として取り扱い、組成と相対比を比較する。 さらに、ヤマトシロアリとカンモンシロアリのコロニーを用いて、抗生物質で細菌を除去した後に両種コロニーを混合し、組成がどのように変化するかを調べる実験を行う。原生生物種の変化を直接検鏡によって観察すると同時に、種特異的な多型マーカーを適用する。 さらに本研究課題全体の研究内容をまとめ、論文として発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度はシロアリの雑種コロニーの共生原生生物群集のモニタリング手法としてAFLP法を試みていたが、本法による十分な原生生物の遺伝的多型の把握が難しいことが明らかになり、データ取得を途中でとりやめた。このため、予定に比較して使用金額が少なくなった。またこれに替わる方法としてNGシークエンサーを用いた配列のキャラクタリゼーションを適用することとした。本方法を適用するため、実験用試薬類や必要な実験用プラスチック器具等の消耗品を調査検討したが、これを次年度購入する。 さらに、種特異的遺伝マーカー使用のための実験用試薬とプラスチック器具の購入、カンモンシロアリの採集および研究成果発表のための旅費に研究費を使用する。
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Research Products
(6 results)