2013 Fiscal Year Research-status Report
シロアリの異種混合コロニーを用いたシロアリ共生微生物群集の成立過程の解析
Project/Area Number |
23657013
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
北出 理 茨城大学, 理学部, 准教授 (80302321)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 悟子 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (80342830)
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Keywords | 共生 / 原生生物 / 群集 / 群集構造 / 大規模移入 |
Research Abstract |
本年度は以下のような研究結果が得られた。 近縁なヤマトシロアリ属の3種(ヤマトシロアリ・カンモンシロアリ・アマミシロアリ)の有翅生殖虫を用いて、通常(雑種)ペアと、雑種ペアを作製し、消化管内の共生原生生物群集の種組成の経時変化を調べる実験を継続してい、対応分析を用いて結果を解析した。ペア形成から700日後の種組成を調査した結果、600日後と同様にヤマト・カンモンの通常コロニーはペア作成時から基本的に種組成に変化がなく、アマミシロアリは特異的な1種を欠いていた。ヤマト・カンモン、ヤマト・アマミの雑種コロニーはヤマト型の組成に収束した。カンモン・アマミの同種コロニーは、両種の本来の組成の中間的組成に収束する傾向が見られた。ヤマト・カンモンの雑種コロニーについては、コロニーの群集構造の類似性に関しても同じ傾向がみられた。シロアリの消化管内原生生物群集はランダムな種の組み合わせによってできるわけではなく、種間相互作用における過去の共適応の歴史を反映して安定な群集構造をとっていることが裏付けられた。またこの特性が閉鎖的環境下にある微生物群集が形成される際に一般的にみられる可能性がある。 またヤマトシロアリとカンモンシロアリの2種の雑種コロニーからパイロシークエンサーを用いたrRNA遺伝子の配列取得を行うための予備的実験を行ったが、途中で材料が死滅してしまったため、新たに材料を準備して実験を行うこととした。さらに細菌を抗生物質で除去した後、ヤマトシロアリ属の異種シロアリを混合する実験について、予備実験を継続して進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の中心となる雑種コロニー形成後の原生生物群集の組成の経時的変化については、計画を3種の組み合わせに拡張して順調に遂行できており、微生物群集の大規模攪乱後の再形成過程と、群集の形成に影響する要因について一般性のある知見が得られている。一方、遺伝マーカーを用いた組成のモニタリングについて、パイロシークエンサーを用いた方法を行う計画にとしていたが、準備していたシロアリのコロニーが死滅してしまい、実験準備に予定より時間がかかることも明らかになったため、本実験は次年度に実施することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
ヤマトシロアリ、カンモンシロアリの2種を用いて、異種混合コロニーの消化管内微生物からゲノムDNAを抽出したのち、パイロシーケンサーを用いて、rRNA遺伝子を標的としたキャラクタリゼーションを行う。遺伝子のモニタリングによって微生物相の変化を把握する手法で、異雑種コロニー形成と消化管内微生物混合の後の、原生生物組成と原核微生物の組成変化の連動を明らかにする。標的配列部位についてはすでに検討を行っており、高い配列の類似性を持つものを種に相当する単位として取り扱い、組成と相対的な比率を比較する。 抗生物質で細菌を除去した後に異種シロアリのコロニーを混合し、組成の変化を調べる実験を本格的に行う。材料にはヤマトシロアリとカンモンシロアリのコロニーを用い、原生生物種の変化のモニタリングには、微分干渉顕微鏡による直接検鏡とともに、種特異的な多型マーカーを適用する。 最終的に本研究課題全体の研究内容をまとめ、論文として発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度当初の研究計画を変更し、パイロシークエンサーを用いた塩基配列データの取得により行う雑種シロアリの消化管内原生生物組成の調査実施期間を一旦中断し、補助事業期間を一年延長して、26年度に実験を再開することとした。このため消耗品購入に充てるべき予算に,未執行残額が生じた。 未使用額をパイロシークエンシングを行うための遺伝子実験に用いる消耗品(プラスチック製ピペットチップ及びチューブ類)の購入に充てることとする。
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Research Products
(10 results)