2012 Fiscal Year Annual Research Report
代謝理論の統合的理解:サイズスケール則と生態化学量論の調和モデル
Project/Area Number |
23657019
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
奥田 昇 京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (30380281)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 倫生 龍谷大学, 理工学部, 准教授 (30388160)
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Keywords | 生態学の代謝理論 / 生態化学量論 / メソコスム / 食物網理論 / サイズスケール則 / 生態系代謝 / バイオメカニスティック |
Research Abstract |
本研究は、全ての生物に共通する生化学反応である「代謝」の速度が体サイズのべき乗に比例して増加するという「代謝のサイズスケール則」に着目し、この現象を個体より上位の生物学的階層である生態系に適用することによって、「生態系代謝」という生態系機能の新たな概念構築を試みることを目的として実施した。 1)生態系代謝の律速要因の実験的解明 高度に環境制御された中規模人工生態系実験装置を用いて湖沼の生態系メタボリズムを制御する要因の解析を行ったところ、代謝のサイズスケール則の予測に反する実験結果を得た。生態系代謝に影響する要因を調べるために多変量解析をおこなったところ、プランクトン増殖の最適な栄養元素比率であるレッドフィールド比に対して相対的に少ない栄養塩により生態系代謝が律速されるという結論を得た。 2)生態系代謝の制御メカニズムの理論的検討 生態系代謝は、食物網に代表される生物群集の構造特性、および、個々の生物の代謝速度等で表される生理学的特性の両方の影響を受ける可能性がある。生物の体サイズ分布に従って生態系代謝が決定することを予測するEnquistの理論予測は後者の仮説に基づくが、その理論的妥当性は種間相互作用を明示的に考慮に入れたメカニスティックなモデルによらなければ検証できない。そこで、食物網構造・個体生理(代謝速度)の両方を取り入れた数理モデルを作成し、両機構の相対的な役割を検討した。解析の結果、体サイズ分布は、特に最大代謝速度が達成されない条件においては、食物網構造に依存して生態系代謝を大きく変化させることがわかった。このことは化学量論的制約が強く働く環境下で個体代謝のサイズ依存的制約が働きにくくなることを示唆しており、実証研究の結果を強くサポートする。
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