2012 Fiscal Year Annual Research Report
放射性炭素分析法を用いた樹木の結実豊凶と資源貯蔵との関係性の解明
Project/Area Number |
23657022
|
Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
市榮 智明 高知大学, 教育研究部自然科学系, 准教授 (80403872)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
陀安 一郎 京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (80353449)
|
Keywords | 種子生産 / 豊凶現象 / 一斉開花 / 繁殖システム / マスティング / 樹木 / 優占種 / 熱帯雨林 |
Research Abstract |
この研究では、多くの樹木で見られる種子生産量の年変動について、そのメカニズムを説明する重要な仮説の1つとして知られる「資源収支モデル」を定量的に検証することを目的とした。戦後の大気中14C濃度の急激な変化を利用し、様々な樹木種子に含まれる炭素の構成年代と繁殖周期との関係を調べ、種子生産に対する貯蔵炭水化物の貢献度について検証を行った。 まず、茨城県小川群落保護林の冷温帯落葉広葉樹林に生育し、繁殖周期の異なる落葉広葉樹10種について、1989~1995年に採取された種子を用いて種子を構成する炭素の同化年代を調べた。その結果、いずれの樹種も繁殖周期に関係なく、1.5年未満の炭素を用いて種子生産を行っていることが分かった。また、マレーシアサラワク州ランビル国立公園の熱帯雨林(低地混交フタバガキ林)に生育する繁殖頻度の異なるフタバガキ科17種について、同様の分析を行った結果、放射性炭素分析によって求められた種子生産に利用される炭素の蓄積に必要な期間は、いずれの樹種でも1.4年未満であった。つまり、樹木は長期間蓄積した炭素資源を種子生産に利用しているのではなく、主として当年に生産した比較的新しい炭素資源を種子生産に利用して、種子生産に対応しており、それは気候帯や森林タイプ、樹種、繁殖頻度が異なっても同じであることが明らかになった。近年の研究により、温帯でマスティングを行う樹種においても、種子生産には主に当年の光合成産物が利用されていることが報告されている。このことから、炭水化物資源の蓄積具合がマスティングを制限する要因であることを前提とした資源収支モデルは、他の貯蔵物質の役割を含めて再考の必要があると言える。
|
Research Products
(3 results)