2011 Fiscal Year Research-status Report
バクテリオファージの宿主域は正しく評価できているのか?:新規宿主域評価法の開発
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23657025
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
井町 寛之 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, 主任研究員 (20361933)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ファージ / 宿主域 / 16S rRNA遺伝子 / FISH法 |
Research Abstract |
本研究課題では、従来の宿主域同定実験とは全く異なる、以下の4つのステップから構成される新規なファージの宿主域同定技術を開発することが目的である。1. 核酸染色剤で染めたファージを微生物叢に感染させ微生物を光らせる。2. FACS (fluorescence activated cell sorting) 技術により、ファージに感染した’光った’微生物細胞を特異的に回収する。3. 回収された微生物細胞からDNAを抽出し、16S rRNA遺伝子を決定することで、どのような種類の微生物がファージの感染を受けたのかを決定する。4. そのクロスチェックとして、回収されてきた微生物細胞の16S rRNAに特異的なDNAプローブをデザインし、先の1の核酸染色剤によるファージ標識技術と微生物の16S rRNAを標的としたFISH (fluorescence in situ hybridization) 法による2重染色により確認を行う。 本手法の開発にはT4ファージと大腸菌をモデルとして用いている。昨年度のステップ1を行うために、核酸染色剤およびEdUを用いたファージの標識方法の検討を行った。その結果、EdUラベルを用いれば、ファージや宿主細胞から蛍光が漏れることなく特異的に宿主細胞を染めて検出できることが明らかとなった。一方で、DAPIやSYBR Gold等の核酸染色剤を用いた場合は、非宿主細胞までも非特異的に染めてしまうことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はステップ1が完成すればよいと考えていたので、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
モデル系での条件検討終了後、T4ファージを複合微生物群に適用することで本評価法の有効性を確認する。複合微生物群には下水処理場で用いられている活性汚泥 (好気性の微生物群集) を候補に考えている。活性汚泥に大腸菌が存在することは知られているので適切なサンプルの1つである。まず、核酸染色剤あるいはEdUで標識したT4ファージを活性汚泥に添加し、宿主微生物に感染させる。ファージに感染して’光った’微生物細胞の有無を蛍光顕微鏡で確認した後に、FACSによりT4ファージに感染した微生物細胞を回収する。続いて、回収した微生物細胞の種を決定するためにrRNAアプローチによる解析を行う。FACSにより回収された細胞からDNAを抽出し、バクテリアの16S rRNA遺伝子のPCR増幅を行う。続いて、PCR増幅産物をクローン化し、塩基配列を決定する。決定した塩基配列は分子系統解析ソフトARBプログラムを用いて分子系統解析を行う。ここで予想される結果はT4ファージの宿主微生物である大腸菌およびその近縁種由来と思われる配列が得られるであろう。続いて、得られた16S rRNA遺伝子クローン配列に特異的なDNAプローブをARBプログラムにより設計する。最後に、ファージの蛍光標識とFISH法による2重染色を行う。活性汚泥に核酸染色剤あるいはEdUで標識されたT4ファージを感染させる。一定時間培養後、パラホルムアルデヒド溶液で固定を行う。この固定した活性汚泥に対して先のステップで設計したDNAプローブを用いてFISH法による2重染色を行う。ここで、ファージおよびFISH法で用いた蛍光物質由来の蛍光が両方観察された微生物が、T4ファージの宿主微生物であると同定される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題で行うファージ宿主域評価法の開発には様々な条件を検討していかなければならないため、ファージを大量に調製しそのファージを精製する必要がある。そのためには、タンパク質やウィルス濃縮および精製で広く用いられている限外ろ過システムを新たに1器購入する。また、ファージの標識に用いるEdU標識のキット類や蛍光標識を付加したDNAプローブ、さらにはrRNAに基づいた解析をするためのPCRや塩基配列決定に必要な分子生物関連のキットの購入を行う。旅費は国内外の学会において成果発表するために使用する。謝金として培地の作成や塩基配列の決定等の作業補助を依頼する予定である。その他としては、文献の複写費や論文投稿料を計上した。
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Research Products
(1 results)