2011 Fiscal Year Research-status Report
両面葉の気孔の緑色光応答にみられる背腹性:緑色光受容体は何か
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23657029
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寺島 一郎 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40211388)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 気孔 / 葉肉 / アポプラスト / 青色光受容体 / 光合成 / 緑色光効果 |
Research Abstract |
最近、気孔の開閉への葉肉の関与が話題になっている。また、気孔開度におよぼす光環境の光受容体が孔辺細胞にのみ存在するとは限らず、葉肉にも存在する可能性がある。気孔開閉への緑色光の影響を、表皮と葉肉に分けて解析するために、Mottら(2008)を参考に、気孔観察システムを構築し、ツユクサの葉を用いて、気孔開閉応答における葉肉の役割を研究した。剥離表皮をゲルに載せて適度な水分を保つと数時間におよぶ観察が可能になった。ゲルに載せた剥離表皮に赤色光で照射しても気孔はほとんど開かないが、これを葉肉に載せると赤色光に応答して開くようになる。剥離表皮を青色光を含む白色光で照射すると気孔は開くが、その状態でCO2濃度を高めてもほとんど閉鎖は見られない。剥離表皮を葉肉に載せると、高CO2による閉鎖が見られるようになる。剥離表皮と葉肉の間にポリエチレンのスペーサーを挟むと、気孔は、剥離表皮の気孔と同様の挙動を示すが、緩衝液に浸したセロファンを挟むと、剥離表皮を直接葉肉に載せた時と同様な応答が見られるようになる。これらの結果は、葉肉がアポプラストの液相連絡を介して気孔の開閉に作用することを示している。今後はこのシグナルの特定が課題となる。また、これまでに検討したのは、青色光と赤色光のみなので、本来の課題である、緑色光を用いた実験も行う。 また、上記とは異なる実験系で、葉柄から蒸散流を介して与える人工木部液のABA濃度やpHが気孔開度におよぼす影響を精査した。単色光の効果は今後検討の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
葉肉組織の関与の重要性が認識されたため、葉肉と剥離表皮の光環境応答性を別個に解析するシステムの構築を急いだ。緑色光の効果を確認する研究にはまだ手がついていない。また、シャガを使った研究には取り組んでいない。しかし、葉肉の関与がある以上、葉肉系と表皮系の分離は必須であり、この意味で順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
・ツユクサを用いて、緑色光応答を解析する。・シロイヌナズナの剥離表皮を用いて生理学的な実験を行うことは困難だが、ツユクサの結果に基づいて、シロイヌナズナの野生型、フォトトロピンやクリプトクロムの変異体の葉片の光応答を解析する。・シャガを用いた、気孔分化の研究に着手し、少なくとも予備的な結果を得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
植物の栽培用消耗品(約20万円)、LEDなどの光源(約20万円)、光学顕微鏡用レンズやファイバーによる照射系(約20万円)、その他の消耗品(約20万円)、の購入に用いる。20万円程度を研究発表用の旅費や英文校閲に用いる。
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