2011 Fiscal Year Research-status Report
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23657032
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鹿内 利治 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70273852)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 葉緑体 / RNA / RNA編集 / 翻訳 / PPRタンパク質 / 光合成 / 遺伝学 / シロイヌナズナ |
Research Abstract |
PPRタンパク質は、葉緑体、ミトコンドリアにおいてRNA編集を含む様々なRNAの成熟化の過程に関与する。タンパク質を構成するPPRモチーフは、特定のRNA配列の認識に関わる。一部のPPRタンパク質はC末領域に異なる機能を有する領域を持ち、我々はCRR2のC末に存在するDYWドメインがRNA切断に寄与することを報告している。本研究は、当初、RNA編集に関わるPPRタンパク質のC末領域と相互作用する編集酵素の特定を目指した。しかし、PPRタンパク質のC末部分がRNA構造を変えることで、編集酵素や翻訳装置等をサイトに呼び込むという新しい考えが現実味を帯びて来た。そこで本研究は、PPRタンパク質であるPGR3を材料に、このPPRタンパク質が翻訳装置を呼び込む分子機構を解き明かすことにまず焦点を置いた。PGR3は27のPPRモチーフからなり、我々は本年度、PGR3がpetLオペロンRNAの安定化、petLおよびndhAの翻訳に関わることを報告した。さらに、PGR3のPPRモチーフに変異を導入し、それらをシロイヌナズナpgr3-1変異株に導入し、3つの機能をそれぞれ相補するかを検討した。その結果、27のPPRモチーフのうち、前半はpetLあるいはndhAの5’UTRとの結合さらにはpetLオペロンRNAの安定化に寄与し、後半部分は両者の翻訳に関わることが明らかになった。この結果は、RNA構造変化を介した翻訳装置の呼び込みのモデルを支持し、さらに直接的な実証を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PPRタンパク質がRNA編集装置の構成因子であることが明らかになり、編集酵素の同定は現実的な目標となった。一部のPPRタンパク質のC末に存在するDYWモチーフがその実体であるという仮説が提唱されているが、それを支持する結果も否定する結果も得られていない。本研究は、生化学による編集酵素の同定を目指したものである。そのような状況のなか、編集装置の呼び込みには、PPRタンパク質によるRNAの構造変化が介在するアイデアが浮上した。また、未発表の情報を含めて、編集装置の実体がかなり複雑であることが創造できるようになった。そこで、当初の戦略を一部変更し、PPRタンパク質がRNAの二次構造を変えることで、そこに他のタンパク質を呼び込む分子機構の解明を当初目標とした。計画の見直しはあったものの、PGR3が翻訳装置を呼び込む分子機構について着実に知見を蓄積し、RNA編集装置の呼び込み機構にもつながる重要な進展であると自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、さらに様々な変異型PGR3を植物に導入し、N末が異なるRNA配列を認識する機構、さらにC末がRNAの二次構造を変えることで翻訳装置を呼び込む機構をin vivoで調べる。さらに直接的な証拠を得る目的でRNAの二次構造の変化をin vitroで評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は、分子生物学に用いる試薬等に主に支出予定である。また研究成果の発表のため、旅費、論文投稿料などにも一部支出する。
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Research Products
(1 results)