2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23657037
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
沈 建仁 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (60261161)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 光合成 / 光化学系II / 膜タンパク質 / 酸素発生 / 結晶化 / 結晶構造 / 水分解 |
Research Abstract |
本研究の目的は、好酸・好熱性紅藻Cyanidium caldariumから高い酸素発生能を持つ光化学系II複合体(PSII)を高純度に単離精製し、その結晶化を行い、X線結晶構造を解明することである。これまですでに同紅藻PSIIの結晶化に成功しており、SPring-8の放射光X線を用いて分解能3-5AのX線回折データを収集した。本研究では、結晶の質と分解能を向上させるため、結晶化条件の改善、結晶の抗凍結剤置換条件の改善、および結晶の脱水処理条件の最適化により、2.75A分解能を与える結晶の析出に成功し、SPring-8のX線を利用して同分解能でX線回折データを収集した。さらにさまざまな重原子化合物を用いて、重原子同型誘導体を作成し、X線回折データを収集した。得られたデータを解析した結果、3種類の重原子同型誘導体から位相情報を取得した。これらの位相情報を用いて、重原子同型置換法によって分析した結果、紅藻PSIIの初期電子密度図を得た。この電子密度図に基づき、初期のPSII構造を構築した。その結果、現在高分解能で構造が解析されている好熱性シアノバクテリアThermosynechococcus vulcaflus由来PSIIでは存在しない酸素発生系の表在性サブユニット、PsbQ'の結合部位を同定することができた。さらに膜貫通領域でもシアノバクテリアPSIIでは存在しない新たなヘリックスの存在が示唆され、紅藻PSIIの構造がシアノバクテリアPSIIの構造と明らかに異なる点があることが示唆された。現在紅藻PSII構造の精密化を行っているが、本申請者が他の科研費課題の実施に専念するため、本課題は本来の研究期間より短縮して終了することになった。
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